税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

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つみたてNISAは学資保険の代わりになりうるか?

学資保険が保険加入者にとって魅力の少ない商品になりつつあることは、以前紹介しました。

 

e-lifeplanning.hatenablog.jp

ただ、それは学資保険を教育資金を確保するための「資産運用」の手段として見た場合の考え方であり、学資保険を文字どおり「保険」であると考えれば、保障の面でほかの方法で学資を貯めるのとは大きな違いがあるということができます。

それでは、保障という保険独自の役割を抜きに考えた時、学資保険とほかの方法ではどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、つみたてNISAと学資保険の特徴やその違いを確認していきます。

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 つみたてNISAとは?

つみたてNISAとは、2018年1月から始まった証券税制上の非課税制度です。まずは制度の概要を簡単に確認しておきましょう。

つみたてNISAでは何を購入するのか

つみたてNISAを始めるには、証券会社や銀行などの金融機関に専用の口座を開設します。

その口座に毎月お金を積み立てていき、そのお金で投資信託・上場株式投資信託と呼ばれる金融商品を購入します。

投資信託から分配金が得られたり、投資信託自体の価格の上昇により、当初積み立てた金額より多くの資金を得ることを目的として行われます。

つみたてNISAは何が「非課税」なのか

通常、投資信託のような金融商品を購入すると、分配金(配当金に相当)を受けることができます。

その分配金には約20%の税金がかかり、分配金を受け取る際に源泉徴収されます。

また、投資信託を売却して譲渡益が発生した場合にも、年間の譲渡益の合計に対し約20%課税されます。

つみたてNISAで購入した投資信託については、その投資信託から受け取る分配金や、投資信託を売却して得られた譲渡益について非課税になることとされているのです。

積み立ての上限額

「つみたて」という言葉のとおり、運用資金を証券会社などに設けた非課税口座に毎月積み立てを行います。上限額は月33,333円、1年で40万円まで積み立てることができます。

非課税となる期間

非課税となる期間は積み立てを開始してから最長20年間であり、最大800万円まで非課税の枠内で運用することができます。

つみたてNISAは誰が利用できるのか

日本国内に居住する20歳以上の人であれば利用できます。

ただし、開設できる口座は1人あたり1つであること、一般NISAとの併用はできないことに注意が必要です。

つみたてNISAは解約できるのか

つみたてNISAはいつでも解約できます。非課税期間が最大20年間あることとされていますが、20年間経過しなければ解約して現金化することができないというわけではありません。

つみたてNISAが学資保険の代わりになる理由

つみたてNISAで運用して、教育資金を確保するという考え方が広まりつつあるように思われます。

どうしてつみたてNISAが教育資金の確保に有効なのでしょうか。

⑴無理なく毎月積み立てを行うことができる

これはつみたてNISAと学資保険に共通する特徴ですが、教育資金を急に用意するのは難しいため、毎月コツコツと貯めることができるのは大きなメリットてす。

つみたてNISAの場合、最大でも年間40万円とされているだけでなく、最低数千円からでも始めることができます。

余裕がない間は少なめの金額で、余裕が出てきたら多めの金額で積み立てを行うなど、ライフスタイルに合わせた運用ができるのです。

学資保険の場合、途中で保険料を変更することは保険自体の見直しをしない限り不可能なため、つみたてNISAの方が柔軟に対応できると言えます。

⑵何年後にいくら必要かという目標にあわせて利用できる

これもつみたてNISA・学資保険共通の特徴ですが、目標の年と金額を決めて、その目標に向けて毎月の支払額を決めることができます。

例えば、子供が生まれてすぐに18歳の大学進学のために300万円を貯めたいと考えるのであれば、単純計算で1年あたり17万円、毎月約14,000円の積み立てをすれば目標に到達することが分かります。

また、つみたてNISAの場合は子供が生まれる前から積み立てを開始することができます。学資保険は生まれてからでなければ加入することができないため、つみたてNISAの方が早くから教育資金を準備することができるメリットがあります。

いずれを選択する場合も、何年後にいくら貯めたいのか、その目標を明確にすることが大切です。

⑶途中解約できるため急な支出にも対応できる

つみたてNISAのように、毎月決まった金額を支払う方式の資産運用は、安定した現金収入があればそれほど問題は起こりません。

しかし、現金収入が大幅に減少したり、まったくゼロになってしまうこともないとは言えず、そのような時にどのような対応ができるかも知っておくべきです。

つみたてNISAの場合、いつでも解約することが可能です。(正しくは、解約でなくいつでも売却してやめることができる、というべきですが)

いざという時には、積み立てをストップするだけでなく、それまでに積み立てた金額を払い戻すことができるのです。

⑷運用結果が学資保険の利回りを上回る可能性が高い

学資保険の運用状況は、どこも苦戦しているといえます。世界的な超低金利政策により安定した運用先がないため、保険会社は「15年後に払い込まれた保険料を5%増やして返します」といった形で確約することが難しいのです。

また、保険としての機能もあるため、単に運用して増やしたお金をそのまま返せばいいというわけにはいきません。

その点、つみたてNISAの場合は、積み立てたお金をすべて自分で使うことができます。また、投資信託による運用は学資保険より利回りがいいと考えられるため、学資保険より多くのお金を手にすることができると考えられるのです。

忘れてはならない学資保険との違い

こうしてみると、学資保険に入るよりつみたてNISAの方が優れているように思われます。特に、普段から株式による運用を行っている人にとっては、学資保険の返戻率は信じられないほど低いと感じることもあるようです。

しかし、つみたてNISAが学資保険よりすべての面で優れているわけではありません。商品としての違いがあることから、その役割や効果にも違いが生じるのです。

⑴つみたてNISAにはいざという時の保障はない

18歳になった時に300万円を受け取るという契約で学資保険の契約をしたものとします。保険期間中に何もなければ、満期になるまで300万円近い保険料を支払って保険金を受け取ります。

しかし、その途中で保険契約者が亡くなってしまった場合、その後の保険料は負担しなくても保険金を満額受け取ることができます。これこそが、学資保険に加入している場合の最大のメリットであり、学資保険に加入する最大の理由です。

つみたてNISAの場合、いざという時にそれまで積み立てた金額を払い戻すことができます。しかし、自分で支払った金額が戻ってくるだけのことであり、運用によって幾分増加している可能性はありますが、大きな保証を得られるわけではありません。

⑵所得控除の適用はない

学資保険の保険料は、生命保険料控除(一般)の対象になるため、所得控除の計算に含めることができます。

保険の契約時期と1年間に支払った保険料に応じて、最大5万円が控除されるのです。

これに対して、つみたてNISAのために積み立てた金額は所得控除の対象になりません。

減税となった金額は、実質的には利回りを得たのと同様の効果があるため、表面的な返戻率だけで判断しないことが重要です。

⑶つみたてNISAを利用すると一般NISAが利用できなくなる

つみたてNISAによく似た制度に、一般NISAと呼ばれるものがあります。この一般NISAは、投資信託以外の個別株なども購入できる非課税口座であり、年間120万円まで投資が可能となっています。

この一般NISAとつみたてNISAは併用できません。そのため、いずれかを選択して利用することとなります。

つみたてNISAを教育資金のために利用すると、それ以外の目的で非課税口座を利用することができなくなってしまうのです。

まずは学資保険とつみたてNISAの違いを知ろう

『学資保険よりもつみたてNISAの方が運用成績が良いため、教育資金を貯めるならつみたてNISAに限る』という考え方は本当に正しいのでしょうか。

最終的には学資保険の保険としての価値をどのように考えるかによるため、人によってその結論は異なると思います。

学資保険はどのようなルールになっているのか、つみたてNISAはどのようなメリット・デメリットがあるのか、もう一度よく考えてみる必要があると思います。

また、学資保険について詳しく知りたいという方は、専門家に相談してみるのもいいでしょう。