税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

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サラリーマンの節税の効果を考える(1)生命保険料控除

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ライフプランニングを考えるうえで必ず話題になるのが、どのようにしたら節税ができるのか、ということです。

税金は、社会として、あるいは国家や自治体としてはなくてはならないものです。
ただ一方で、個人で見れば支払わないわけにはいかないが、何の見返りもない経費です。
そのため、節税することができれば、その分手取りの収入を増やすことができ、大きなメリットがあるのです。

個人事業主の方の場合は、必要経費が増えるとその分所得が下がり、税金の金額は減少します。
しかし、サラリーマンの方の場合は必要経費を計算しないため、法的に認められた方法でなければ、いくらお金を使っても節税をすることはできません。

そこで、節税には具体的にどのような方法があるのか、その内容をご紹介していきます。
また、節税することで税額が少なくなること以外に得られるリターンについて、解説します。
節税によるリターンについても知ったうえで、実行するようにしましょう。

何をすると節税できるの?

節税するためには、所得税や住民税の計算をするうえで、税額を減らすことが法的に認められた行為をしなければなりません。

税額を減らすことができるものとして認められているものには限りがあるため、その内容を知っておく必要があります。

税法上、所得金額や所得税額を軽減するものであり、すぐにでも実行できる節税の方法には、以下のようなものがあります。
(住宅ローン控除などは、実際にはすぐに実行できるわけではないですが)

このほかにも、節税効果のあるものはありますが、さしあたって節税を考える場合には、こういったものの中から検討する人が多いと思います。

また、すでに利用しているという人も多いかもしれません。

生命保険料控除を利用した場合を検証

先ほどあげた節税方法を実行するためには、すべてお金を支払う必要があります。
そこで、実際に節税効果を得るために、いくら支払う必要があるのか、そして、その結果どれだけの税額が軽減されるのか計算してみましょう。

ここでは、生命保険料控除について、その支払保険料に対する所得控除や税額軽減の効果を確認していきます。
所得税率は人によって異なりますが、ここでは復興特別所得税も含めた10.21%として計算します。
(なお、住民税はすべての人が一律10%となります。)

生命保険料控除の計算方法

生命保険料控除は、2011年以前の契約か、2012年以降の契約かによって、旧生命保険料控除と新生命保険料控除に区分されます。
ここでは、新生命保険料控除の金額について確認しておきます。

生命保険の内容により、「一般」「介護医療」「個人年金」の3つに区分します。
それぞれの区分ごとに、1年間に支払った保険料を集計し、所得金額から控除される金額を計算します。

 

所得税の生命保険料控除の計算方法は、以下のとおりです。

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また、住民税の生命保険料控除の計算方法は、以下のとおりです。

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例えば、1年間に一般保険料を50,000円、介護医療保険料を40,000円、個人年金保険料を120,000円支払っている場合の控除額は以下のようになります。

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この場合、1年間に支払った保険料の合計は21万円となり、そのうち生命保険料控除の対象となる金額は所得税で102,500円、住民税で78,500円となります。

税額への影響

先ほどの例で、所得税・住民税それぞれで所得金額が控除されると、税額にはどれくらいの影響があるのでしょうか。
生命保険料控除が適用されると、所得控除として計算された分、所得金額が減少するわけですから、この金額に税率を乗ずれば、税額に対する影響額を計算することができます。

この場合の計算は以下のとおりです。

所得税)102,500円×10.21%=10,465円

(住民税)78,500円×10%=7,850円

(合計)10,465円+7,850円=18,315円

結果的に、21万円の保険料を支払って、18,315円(8.7%)の節税になったのです。

生命保険料控除を利用することで得られる節税以外の効果とは?

生命保険料控除の適用を受けるためには、生命保険に加入する必要があります。
生命保険に加入すれば、いざという時に保障を受けることができます。

生命保険の保障の内容は、その保険の種類により様々です。
生命保険のように、アクシデントに対応するものもあれば、学資保険のように計画的に利用できるものもあります。

できればアクシデントはない方がいいのですが、いざという時の保障がないのは大きな不安となります。
そのため、保障の内容や金額をよく考えたうえで利用する必要があります。

また、学資保険のように保険金の入金時期や利率があらかじめ決められたものは、預金の代わりに利用することもできます。

ただ、保険会社の倒産などのリスクは常にあるため、保険金の支払いは絶対的なものではないことに注意が必要です。

生命保険料控除のメリットとデメリット

最後に、生命保険料控除を利用することのメリットとデメリットについて、簡単にまとめてみましょう。

生命保険料控除のメリット

生命保険料控除は、生命保険契約という多くの人が利用しているものが対象となるため、広く利用しやすい制度といえます。

加入の手続きも簡単ですし、支払う生命保険料も自由に設定できるため、最大限に生命保険料控除を適用できるようにすることができます。

生命保険料控除のデメリット

生命保険料控除は、支払う生命保険料が多くなるほど、支払金額に対する控除金額は少なくなります。

また、実際に税額に対する影響は所得控除の金額×税率で計算されるため、税率が高い人(=所得が多い人)ほど節税効果が大きくなり、逆に税率が低い人(=所得が少ない人)ほど節税効果は小さくなります。

そのため、生命保険契約を締結しても、思ったほど節税効果が得られないケースもあるのです。
特に税率が低い人の場合は、税額としての効果は限定的と言わざるをえません。

生命保険料控除の適用を受けるために生命保険契約を結ぶのであれば、その保険契約は無駄なものでないか、もう一度考える必要があります。

生命保険は保険の加入目的をよく考えて

生命保険を契約すれば、毎年多額の保険料を支払うこととなります。
生命保険料控除を適用すれば税額は軽減されるため、将来への備え以外にもリターンはあるはずと考えるかもしれません。

しかし、多くのサラリーマンが該当すると思われる所得税率10.21%(復興特別所得税含む)の場合、先ほどの計算例のように、支払った保険料の1割程度しか税額が軽減されないことも考えられます。
そのため、生命保険に加入すれば税額が減少するというのは、極めて限定的な話なのです。

また、保険に加入することで得られる税額以外のリターンは、すぐに発生するものではないことから、保険料の支払いが大きくなることで手取りの収入が減ってしまい、かえって生活が苦しくなる原因となることもあります。
生命保険の加入を考えている方は、その節税効果より、保険本来の加入目的や時期・金額などを考える必要があります。

不安な方は、ぜひ専門家のアドバイスを参考にして、保険の加入を検討するようにしましょう。