税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

税理士でもあるFPが日々考えていることを書きます

高専は理系学生にとって魅力的な進学先なのか?

私が中学生だった頃、進学を検討していた高校のパンフレットを目にした記憶はありません。公立高校はもとより私立高校に関しても、中学校からすべての生徒にパンフレットが配布されるといったことはなかったと思います。

しかし、現在は昔とは違います。私立高校の多くはすべての生徒にパンフレットを配布しており、公立高校も説明会などに行けばきれいに製本されたパンフレットをもらってきます。

そんな中、先日、中学3年生の子供が、高等専門学校高専)のパンフレットをもらってきました。私が中学生だった時には自身が理系に進むイメージを持っていなかったため、高専への進学を考えたことはまったくありませんでした。

しかし、娘はどのような進路を考えているのかまだ分かりません。そのため、高専に進むとしたらどれくらい学費がかかるのだろうと考えました。そもそも高専については「ロボコン」くらいしか知らず情報が少ないため、基本的なことから知っておきたいと思ったのも、今回の記事を作成した動機です。娘が実際に高専に進む可能性は低いのですが、その学費や支援金制度について知っておく価値はあると思い、調べることにしました。

高専に進学する際にかかる学費

高専は「高等専門学校」と呼ばれる高等教育を行っている学校です。その成り立ちや定義についてはここでは省略しますが、中学校を卒業した生徒が入学し5年間の教育を受けるため、高校とも大学とも異なる学校の形態であることが分かります。

なお、私の娘がもらってきたパンフレットは県内にある国立の高等専門学校でしたが、公立や私立の高等専門学校も存在しているようです。全国には57の高等専門学校があり、そのうち51校は国立、公立が3校、私立が3校とのことです。

国立の高等専門学校に進学するために必要となる学費は、パンフレットをもらってきた県内の高専の場合、以下のとおりです。

入学金 84,600円

授業料 234,600円(年額)

また、遠方から進学する生徒のために、寮も用意されているとのことです。

寮費 約35,000円(月額・食事代込)

入学金+授業料で計算すると、入学初年度にかかる費用は319,200円、5年間の合計では1,257,600円となります。公立高校の入学金が5,650円、授業料が年額118,800円だったのと比較すると、若干高くなるようにも思えます。

しかし、これが大学の入学金や授業料まで考えると、その金額の評価は大きく変わります。16歳~22歳までの7年間、どこで教育を受けるかによって学費がどの程度変わるのか見ていきましょう。

公立高校+国立大学の場合

公立高校の入学金と授業料の金額は、以下のとおりです。

入学金 5,650円

授業料 118,800円(年額)

国立大学の入学金と授業料の金額は、以下のようになります。

入学金 282,000円

授業料 535,800円(年額)

高等学校等就学支援金の支給額を考慮せずに、公立高校+国立大学の7年間に支払う入学金と授業料の合計額は、以下のようになります。

(公立高校)

入学金5,650円+授業料118,800円×3年=362,050円

(国立大学)

入学金282,000円+授業料535,800円×4年=2,425,200円

合計2,787,250円

なお、実際には支援金の支給を受けられる人も多くいると思います。公立高校の場合、支援金の対象となれば授業料は実質ゼロとなるため、7年間に支払う入学金と授業料の合計額は、2,430,850円となります。

国立の高専に7年間通う場合

高専は通常、5年間通います。ただ優秀な学生は、卒業後に専攻科に進むことができ、専攻科を修了すれば大学を卒業したのと同じ学士を取得することができます。

専攻科に進学した際の入学金と授業料は以下のとおりです。

入学金 84,600円

授業料 234,600円(年額)

お気づきかもしれませんが、専攻科に進んだ場合の授業料はまったく変わりません。入学金は支払う必要がありますが、その金額も高専入学時と変わりません。

そのため、高専5年間+専攻科2年間の入学金と授業料の合計額は以下のようになります。

高専

入学金84,600円+授業料234,600円×5年=1,257,600円

高専専攻科)

入学金84,600円+授業料234,600円×2年=553,800円

合計1,811,400円

なお、高専1年~3年の3年間は、高校に通うのと同じ年代となります。この間は、高専に通う場合でも高等学校等就学支援金の支給対象となります。支援金の対象になると、負担額は1,455,000円になります。

こうしてみると、一般的に一番学費が少なく済むと思っている「公立高校+国立大学」のルートより、さらに学費は少なく済むことが分かります。

高専に入るのは難しい?

学費だけで比較すれば、高専に通うのはお得なようにも思えます。ただ、高専に入るのは難易度が高く簡単ではないと思っている方が多いと思います。

そこで、高専に入る際の難易度が分かるデータを調べました。ただし、大学入試に関するデータは大手予備校などが作成しているため多くの情報がありますが、高専に関する情報は少なく、情報収集には苦労しました。ここでは、

みんなの高校情報|全国の高校の偏差値・口コミ・入試情報が満載!

から、高専入学時の偏差値などを見てみます。

国公立の高専は全体的に偏差値高め

このサイトによれば、全国の高校の中で最も偏差値の高い灘高校が79とされている中で、国公立高専の最難関は偏差値69となっています。そのほかにも偏差値65以上の高専が18校あるなど、全体的に偏差値は高いと言えるでしょう。

都道府県ごとに見ると、各県のトップ10に入っている学校が数多くあり、地域のトップクラスの生徒が集まっている状況が想像されます。逆にいえば、学費が安く済む一方で、入学するのは簡単でないのです。

私立の高専は偏差値は低い

一方、私立の高専が全国に3校だけあります。この私立の高専については、偏差値は全体的に低めとなっています。

このサイトでは、私立高専の偏差値は47~56となっており、国公立の高専と比較すると差があるようです。これは、学費の違いも大きく影響しているのではないかと考えます。例えば、某私立高専の入学金と授業料は以下のようにになっています。

入学金 300,000円

授業料 500,000円(年額)

施設費その他 約36万円(年額・うち初年度のみの費用約15,000円)

入学初年度は入学金を含めて約116万円、2年目以降は毎年約84万円かかるので、その負担は私立大学に進むのと比較しても大きな差はありません。そのため、私立高専に進む魅力は大きく失われてしまうのです。

国公立の高専は魅力的だが入学は簡単ではない場合も

国公立の高専に通うと、最も費用をかけずに大学卒業と同じ学士の称号を取得することができます。そのため、国公立の高専に通うことには大きな魅力があるといえそうです。

ただし、高専に進むことは15歳にして将来の方向性をある程度決める必要があること、そして何より高専に入ること自体が簡単ではないことが、大きな障害になる可能性があります。

高専自体の学費はどこよりお得に思えますが、そこに入るための教育費が必要な場合もあります。子供が小さなうちから、様々な可能性を広げるために、教育資金の準備を始める必要があります。

学資保険や積立NISAなど、様々な方法を検討した上で、最適なものを選ぶようにしましょう。

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