税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

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課税所得金額の計算のポイントは「所得控除」にあり

前回の記事で、収入金額と所得金額の違いを解説しました。収入金額は売上高、所得金額は利益金額と説明しましたが、最後の最後に実は所得金額は2種類あることをご紹介しました。

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2種類ある所得金額のうち、課税所得金額が高等学校等就学支援金の支給額の判定に用いられています。そのため、利益金額にあたる所得金額より課税所得金額がいくらなのかを知ることが、多くの人にとって重要なのです。

そこで、課税所得金額の計算方法や、課税所得金額の算定に重要な所得控除とはどのようなものか、解説していきます。

課税所得金額の計算方法

課税所得金額とは、所得税や住民税などの計算を行う際に、その税額を計算するために用いる利益金額のことです。課税所得金額を求める際の計算方法を、順に説明していきます。

「所得金額」を計算する

所得税や住民税などの税金は、すべての人に必ず発生するものではありません。利益がなければ、いくら収入金額が大きくても課税されることはないのです。そこで、収入金額(売上金額)とは別に、所得金額(利益金額)の計算を行います。

  • 個人事業主の場合
    収入金額(売上金額)-仕入高-必要経費=所得金額
  • 給与所得者の場合

    収入金額-給与所得控除=所得金額

ここまでの計算で求めた金額が、「所得金額」となります。ただし、この金額に税率を乗じて税額を計算するわけではありません。この「所得金額」を求めたら、次の段階に進みましょう。

なお、給与所得者の場合は、収入金額が分かれば所得金額も簡単に計算できます。一方、個人事業主の場合は、何が必要経費になるのか、あるいは仕入高や必要経費の金額は毎年変動するといった問題があるため、実際には所得金額を求めるのも簡単ではないでしょう。

所得控除の金額を集計する

「所得金額」の計算を行うことで、事業から発生する利益金額を計算することができました。ただし、これはあくまで、「事業」を営むうえで発生した利益を計算したにすぎません。

すべての人は、事業を行うと同時に、一個人としての生活を送っています。生きていくためには、最低限の支出が発生しますし、扶養家族が増えればその金額も大きくなります。また、医療・介護や老後の資金などの問題について、社会全体で扶助する体制を作り上げることで、結果的に国や自治体の負担を減らすことができると考えられます。

そこで、すべての人に一定の控除額を認めるとともに、扶養家族となる人がいる場合には、その控除額を増やすこととしています。また、特定の支出が発生した場合には、その支出額に応じた控除額を計算することとされているのです。

ここで求めた所得控除額を、所得金額から差し引くことで「課税所得金額」を計算します。

所得金額-所得控除額=課税所得金額

課税所得金額を求める方法は、個人事業主でも給与所得者でも変わりはありません。課税所得金額の計算を行うために重要なのが、正しく所得控除の計算を行うことです。

所得控除の種類と計算方法

所得控除となる金額は、全部で15種類もあります。そのため、このすべてを正しく把握し、間違いなく計算するのは非常に大変なことです。

そこで、ここでは特に重要な所得控除とそれ以外の所得控除に区分して紹介していきます。

特に重要な所得控除

多くの人に関係する所得控除です。自身にも関係しているのではないかと考えて、その金額を計算するようにしましょう。

医療費控除

1年間に支払った医療費の合計額により、所得金額から控除される金額を計算します。同一生計にある家族の支払った医療費もあわせて集計することができます。

基本的には、1年間に支払う医療費の額が10万円を超えた場合に適用できます。

なお、医療費控除の適用を受けるためには、確定申告しなければなりません。

社会保険料控除

厚生年金保険料、国民年金保険料、健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、雇用保険料、国民年金基金掛金などの支払金額が控除されます。

給与所得者の場合は、基本的に給料や賞与の支給時に源泉徴収されており、年末調整の際に1年分の金額を集計しています。そのため、社会保険料控除の金額は源泉徴収票で確認することができます。

一方、個人事業主の方は自身で国民年金保険料や国民健康保険料を支払っているため、その支払金額を集計しなければなりません。

なお、扶養家族の分として支払った金額がある場合は、その金額を含めて控除の対象とすることができます。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済は聞き慣れない言葉かと思いますが、個人事業主や小規模な会社の経営者が加入できる退職金制度です。

ただ、これ以上に重要なのは、iDeCoに加入する人の掛金が、この小規模企業共済等掛金控除の対象になるからです。iDeCoの口座を開設している金融機関から1年分の掛金の証明書を入手して、確認しなければなりません。また、この証明書は年末調整や確定申告の際に添付する必要があります。

生命保険料控除

生命保険、介護保険個人年金保険の保険料を支払った場合に、その保険料から所得控除の金額を計算します。

保険料の支払金額は、保険会社から証明書を入手して確認する必要があります。この証明書は、年末調整や確定申告の際に添付することとされています。

地震保険料控除

地震保険の保険料を支払った場合に、その保険料から所得控除の金額を計算します。

保険料の支払金額は、保険会社から証明書を入手して確認する必要があります。この証明書は、年末調整や確定申告の際に添付することとされています。

配偶者控除配偶者特別控除

配偶者の所得金額が年間48万円以下であれば、配偶者控除が適用されます。納税者自身の所得金額および配偶者の年齢に応じて、控除額が決定されます。

また、配偶者の所得金額が48万円を超えても、133万円以下になる場合は、配偶者特別控除が適用されます。納税者および配偶者の所得金額に応じて、控除額が決定されます。

扶養控除

扶養親族がいる場合、扶養控除が適用されます。扶養親族の年齢や同居の有無などにより、その控除額が決定されます。

なお、扶養控除の適用を受けるには、納税者と同居していなければならないと思っている方もいます。しかし、老人ホームに入る親や大学進学のために下宿する子供のように、離れて暮らす場合でも扶養親族に該当し、扶養控除が適用されるケースは多くあります。

基礎控除

納税者自身の所得金額が2,500万円以下であれば、どのような状況にある人でも適用されます。

その他の所得控除

その他にも所得控除となるものはいくつもあります。ただ、実際に該当する人が極端に少ないものもあるため、ここでは簡単にご紹介するだけとします。

  • 雑損控除
    災害や盗難などの被害にあった場合に適用できます。
  • 寄附金控除
    国や地方公共団体特定公益増進法人などに寄付を行った場合に適用できます。
  • 障害者控除
    納税者自身や扶養親族に障害者がいる場合に適用できます。
  • 寡婦控除
    夫と離婚した後に婚姻していない人などの要件に該当すると適用できます。
  • ひとり親控除
    納税者がひとり親である場合に適用できます。
  • 勤労学生控除
    納税者が勤労学生である場合に適用できます。

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