税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

税理士でもあるFPが日々考えていることを書きます

あなたは「神山まるごと高専」を知っていますか?

 

高等専門学校のことを調べている中で、以下のようなページを発見しました。

kamiyama-marugoto.com

このブログで高専のことを調べるようになってから、高専の新設計画があることを初めて知りました。そして、その一見風変わりな名称とこれまでにない新しいコンセプトの学校は、これから話題になるのではないかと、ひそかに注目し始めました。

ここでは、この神山まるごと高専について、簡単にご紹介します。

神山まるごと高専とはどのような学校?

神山まるごと高専(仮称)とはどのような学校なのか、まずはその概要をご紹介しておきます。

どうして徳島県なのか、そして定員わずか40名の小規模な学校なのかといった点は、後ほど確認していきます。

私がまず驚いたのは、2023年に高専が新設されるということです。(まだ正式に認可されていない段階では、新設される計画であるというべきでしょうか)

高専の歴史は、高専が設置された初年度にあたる1962年に始まります。この年には、国立12校、公立2校、私立5校が開校し、その後も1965年まで毎年10校前後の学校が開設されています。また、1967年には5つの商船高専が開校し、1980年になる前には現在も存在するほとんどの高専の基礎が作られています。

統廃合を除いた純粋な高専の新設は、2004年に開校した沖縄高専が最後であり、これ以後は高専が新設されることはなかったのです。

今回ご紹介する「神山まるごと高専」は、約20年ぶりの新設高専ということになるので、個人的に注目しています。

徳島県神山町ってどんなところ?

注目度が高いのは、久々の新設高専であることだけではありません。その立地にも、この高専の個性があふれているのです。

名称の由来にもなっている徳島県神山町は、人口5,000人にも満たない小さな町です。いくら全寮制の学校であるとしても、このような田舎に学校を設立することは、学生を募集するうえではマイナスでしかないように思われます。

しかし、この学校は神山町にあるからこそ、その存在意義がより大きくなるのです。なぜなら、神山町は「地方創生の聖地」と呼ばれている場所だからです。

2019年のものになりますが、神山町の状況を伝える記事がありました。

wirelesswire.jp

神山町には、多くのIT企業のサテライトオフィスが置かれ、そこで働く人が全国各地からやってくるという状況が生み出されているのです。

この取り組みは、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワーク・リモートワークの重要性を多くの人が知る10年ほど前からすでに行われており、神山町やそこに立地した企業の先見性に驚かされます。

特に、神山町に最初にサテライトオフィスを立地した株式会社Sansanは、テレビCMでもおなじみの会社ですが、多くの人に認知される前から神山町にオフィスを設けていたということになるのです。

高速インターネット回線を充実させたこと、神山町に多くの自然があふれていること、そしてそこに住む人たちが排他的ではなく新しいものを受け入れる環境にあったことが、これほど多くの企業の進出を促してきたと考えられます。

神山まるごと高専の特徴

まだ正式に認可が下りておらず、ホームページなどの情報でしか知ることができません。ただ、これまでの高専が日本の製造業や海運業を支える人材の育成に主眼が置かれていたのに対して、この神山まるごと高専は起業を目指す若者を育てることが大きなテーマになっているようです。

実際にホームページを見ると、「卒業後のキャリアパス」として、卒業後に就職する人が30%、編入を目指す人が30%、起業する人が40%とされています。もちろん、これは実際に卒業生が出ていないどころか、まだ入学生もいない状況では何とも言えませんが、学校の目指す方向性はこの記載を見てもはっきりしています。

もう1つ大きな特徴が、そのカリキュラムにあります。ソフトウェア分野を中心とした情報工学、IoTを理解するための電子工学を中心としたものづくりの基礎を学ぶことができるほか、デザインや映像・建築などの表現方法、そして起業家精神を学ぶカリキュラムも用意されています。

さらに、企業家講師として、第一線で活躍する人が多くホームページに紹介されています。このような方が今後、どのような形でこの学校の運営に関わることになるのかも注目されるところだと思います。

学費の不安はどうする?

魅力の大きな学校になりそうな神山まるごと高専ですが、その特殊な学校ゆえ、不安な点も少なくありません。特に私は、この学校の1期生になるであろう現在中学3年生の子供を持つため、学費などがどれくらいかかるのか、職業柄どうしても気になりました。

ホームページを調べてみると、学費は年間200万円、寮費は年間100万円程度かかる予定との記述がありました。年間300万円の支出は、誰でも簡単にできるような額ではありません。

ただし、1期生については5年間の授業料1,000万円が奨学金として給付され、実質無償化が決定しているとのことですから、寮費だけの負担になりそうです。また、寮費の負担についても、世帯年収に応じた給付型奨学金が整備される予定とのことですから、年間の負担が100万円以下になる可能性もあります。

2期生以降についても、授業料の実質無償化を目指した準備が行われているとのことですから、この点は親世代にも注目すべき点になるでしょう。

実は、この給付型奨学金の充実こそ、神山まるごと高専が小規模な学校として運営していくためのポイントとなっています。神山まるごと高専の設立の趣旨に賛同した多くの企業などが奨学金の資金を提供し、学校の卒業生から新たな人材が社会に生み出されるという循環を目指しているのです。

15歳という年齢はまだ子供ですが、自身の道を切り開くための段階にすでに入っているのです。自分の偏差値や学力にあった高校に進めばいいという考えを捨て、自身でその進路を決めていくことができれば、いずれ起業家として新たな取り組みを行うこともできるでしょう。その時に、神山まるごと高専で学んだことが生かされるのであれば、この学校の存在意義は大きかったということになるはずです。おやとしては、そのような決断ができる子供になってほしいという願望を持ちつつ、現実はまだまだかなと思い知らされるのです。