税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

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我が子が高校に入る際にどれくらいの学費がかかるのか(令和4年度 公立高校編)

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私事ですが、私の子供が中学3年になり受験生となりました。もっとも、まだ受験に向けて緊張感が高まるとか、勉強に一段と気合いが入るといった雰囲気は一切ありませんが。

子供が受験するからといって親が代わりに勉強するわけではないため、親にできることは情報収集とお金の準備だそうです。中学校で行われた進路説明会でも、子供の選択肢を狭めないために、今からでもいいのでお金を準備をしておいて下さいと言われました。FPや保険会社の人などに言われるより、学校の先生に言われると重みがあります。

そこで、これから高校受験する人がどれくらいお金を必要とするのか、その金額をザッと計算してみましょう。ここでの計算は私の頭で思いつくものに限られるため、それ以上にお金がかかる場合もあると思います。まずは公立高校へ進学を考えている場合の費用です。

高校入学にかかる費用

東京近郊・大阪近郊に住む方は、中学受験を経験している方も多くいると思います。しかし、私が住む愛知県のような地方の場合、私立中学の受験をする人は限定的で、多くの生徒は地元の公立中学に進みます。そのため多くの生徒が、15歳にして初めて公立高校へ入るための入試を受けることとなります。

そのため子供を持つ親も、子供が中学校を卒業するタイミングで初めて、その後の学費について考えることとなります。

愛知県の公立高校(全日制)の学費は、以下のように定められています。

  • 入学料 5,650円
  • 授業料(年額) 118,800円

もっとも、ほとんどの都道府県の公立高校の入学金・授業料はこの金額になっているようです。わずかに異なる都道府県もいくつかあるようですが、100円程度の違いなのでほとんど問題にはなりません。

私立高校や私立大学にかかる学費を目にする機会が多いため、このシンプルな表記は非常に分かりやすいです。
3年で卒業してくれれば、授業料の総額は356,400円となるのです。

ただ、これですべてではない点に注意が必要です。学校で使う教材費、学校の制服代や体操服代、そして部活にかかる費用、通学定期代など、実際は人によってかかる費用はまちまちです。

高等学校等就学支援金制度を利用する

高等学校等就学支援金制度は、高校等に通う生徒の授業料の負担を支援する制度です。世帯ごとの所得金額や通学する学校によって、その支援の有無や内容が異なるため、条件をよく確認しておく必要があります。

全日制の公立高校に通う生徒がいる場合、両親の一方が働いている場合と両親共働きの場合では、その目安の金額が異なります。

両親のうち一方が働いている場合(高校生の子供1人) ➡ 年収約910万円

両親共働きの場合(高校生の子供1人) ➡ 年収約1,030万円

ここで注意しなければならないのは、両親共働きの場合には、両親の収入の合計で計算することとなる点です。ただし、一方が他方の配偶者控除に入っている場合は、2人の年収を加算する必要はなく、1人の年収だけでの判定となります。パートで配偶者の扶養に入っている場合には、一方が働いている場合となるのです。

公立高校に通う場合、授業料の年額118,800円だけが支援金の対象となります。そこで、この年収を上回らなければ、満額の支援金を受けることができるのです。

なお、文部科学省のホームページには、所得基準に相当する年収の目安が紹介されています。扶養控除の対象となる人が他にもいる場合は、年収の基準額は少し高くなります。高校生の子供以外にも高校生や大学生の子供がいる、あるいはいずれかの親が扶養に入っている場合は、こちらのページを確認してください。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/20210317-mxt_kouhou02_2.pdf

残念ながら(?)、私は年収基準には引っかからないので、この支援金を受けることができそうです。ただし、授業料以外の支出については支援の対象にならないため、その分の準備をしておく必要はありそうです。

実際に年収910万円となるサラリーマンの計算事例

高等学校等就学支援金制度を利用して、公立高校の上限額である118,800円の支給を受けるためには、サラリーマンの年収が910万円以下であることが目安となります。

ここで「目安」という表現を使っているのは、支援金の適用条件は収入金額ではなく、以下の算式によって決められているからです。

課税所得額×6%-市町村民税の調整控除額 < 304,200円未満

このうち「市町村民税の調整控除額」は、1,500円から2,000円程度の金額になりますが、計算上は大きな影響がなく無視しても結果はほぼ変わりません。

また、「課税所得額」は税率を乗じる前の金額であり、住民税の計算の基礎となる金額です。この金額に6%を乗じて304,200円未満になるようにするには、課税所得額は304,200円÷6%=507万円未満となる必要があります

なお、年収910万円のサラリーマンのモデルケースで、課税所得額が507万円となるのは、以下のようなケースです。

  • 年収(額面) 910万円
  • 社会保険料 93万円
  • 配偶者の所得金額0円のため、配偶者控除の適用あり
  • 子供1人が高校生のため、扶養控除(一般)あり

実際には、社会保険料の金額はもう少し大きくなったり、生命保険料控除や地震保険料控除の適用を受けたりする場合があるため、910万円を超えたからといって直ちに対象から外れるということはなさそうです。

サラリーマン以外の方の所得基準は?

この支援金にある年収基準のように、「いくらまでの収入であれば対象になる」という金額が明らかにされている場合、その金額はたいてい給与収入となっています。

この時に困るのは、サラリーマンでない自営業の方です。近年では、副業の収入を申告している方もいるため、サラリーマンでも給与収入以外に所得がある人も多くいます。そこで、サラリーマン以外の方が支援金の支給を受けるための要件を確認していきましょう。

収入金額と所得金額の関係

要件を確認する前に、収入金額と所得金額の違いについて簡単に説明しておきます。

収入金額とは、サラリーマンであれば額面金額、自営業の方であれば売上高に相当します。サラリーマンの方で年収1,000万円という場合、その金額は額面金額、つまり総支給額を指すのです。

これに対して、収入金額から仕入高や家賃・光熱費などの経費を差し引いた後の金額が所得金額となります。サラリーマンの方については、給料を受け取る際に必要な経費はありませんが、税金計算上は必要経費に相当する「給与所得控除」の金額を収入から差し引いて所得金額を計算するものとされています。

サラリーマンの場合

額面金額(収入金額)-給与所得控除=給与所得

自営業の方の場合

売上高(収入金額)-仕入高・必要経費=所得金額

給与収入910万円の場合の給与所得はいくらになる?

まずは、118,800円の支援金の支給を受けるための目安となっている「給与収入910万円」の場合、給与所得がいくらになるのかを考えてみましょう。

給与所得控除の金額は、以下の表を使って計算します。

この表から、給与年収910万円の場合、給与所得控除の額は195万円になると分かります。

また、給与収入が850万円を超え、23歳未満の扶養親族がいる場合は、所得金額調整控除という控除額が適用されます。これにより、「(給与収入額-850万円)×10%」で計算される金額が給与所得金額から控除されます。なお子の算式では「給与収入額」は1,000万円が上限となるため、最大で15万円が控除されます。これは給与所得者のみに適用される控除ですが、年収910万円のサラリーマンの所得金額を考える場合には考慮しておく必要があります。

したがって、この場合の給与所得金額は以下のように計算されます。

収入金額910万円-給与所得控除額195万円-所得金額調整控除6万円=給与所得金額709万円

事業所得の人は所得が709万円以下になるように

事業所得や不動産所得がメインの収入となっている人は、「売上高-仕入高・必要経費」の金額が709万円以下であることが、118,800円の支給を受けられる目安となります。

ただ、この金額はあくまでも目安であり、扶養家族の人数が多い場合や、生命保険料控除・地震保険料控除などの適用を受ける場合には、これより大きな金額でも支援金の対象となるケースがあるのです。

学費の準備は早めに行う

公立高校に進学する希望の子供がいる場合、親などの保護者の所得状況により支援金を受けられる場合もありますが、中には支援金の対象にならないケースもあります。

このような場合には、あらかじめ教育資金の準備をしておかなければなりません。学資保険を利用する方法、積立NISAなどを利用して資金を貯める方法などが考えられるため、どの方法がいいのか検討したうえで準備しておきましょう。

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