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サラリーマンの節税の効果を考える(2)iDeCo


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サラリーマンが所得税や住民税の節税を行う場合、所得控除や税額控除が認められるものを実行しなければなりません。

節税ができるものは限られているため、事前に何をするべきか、よく検討して実行することが重要です。

今回は、そのような所得控除が認められるもののうち、iDeCo(個人型確定拠出年金)についてご紹介します。

そもそもiDeCoとはどのような制度なのか、そしてそのメリットとデメリットを知ったうえで、節税の手段として利用することを検討しましょう。

 iDeCoとはどのような制度?

iDeCo知名度は、制度が始まった当初よりかなり上昇しています。

また、すでに利用しているという人も多いかもしれません。

ただ、依然としてその中身をご存知ない方もいるかと思いますので、改めてiDeCoとはどのような制度なのかを解説します。

iDeCoとは

iDeCoとは、個人型確定拠出年金の略称です。

個人型確定拠出年金は、現役世代として働いている間に掛金を拠出し、自らが定めた方針で運用を行い、積み立てた資産を自分で決めた方法で受け取る、というものです。

これだけ見れば、自分で株式や投資信託、債券などを購入するのと大差ないと思うかもしれません。

ただ、個人型確定拠出年金を利用すると、運用や受取に関するそれぞれの場面で、税額が少なくなるような3つの特徴があります。

①掛金が所得控除の対象となる

現役世代のうちは、給与所得や事業所得が発生し、毎年多くの税金を負担することとなります。

iDeCoを利用した場合、その掛金については全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の額が軽減されます。

②運用益が非課税となる

iDeCoのために拠出した掛金は、老後資金として受け取るまでの期間、金融商品を購入するなどして運用されます。
このように、長い期間にわたって運用を行うことで、当初拠出した金額より大きな金額を受け取ることができるようにするのです。

iDeCoにより運用を行う場合、どのような商品をいくら購入するのかは、利用者が自由に決めることができます。
その際、それまで保有していた商品を売却して、新たな商品を購入することもできます。

この時、仮に売却した金融商品が購入した時の金額より上昇していれば、売却益が発生することとなります。
通常は、金融商品を購入して利益が確定した場合、その利益に対して所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%の税金が課されます。

しかし、iDeCoで運用した結果発生した売却益については、課税の対象とはなりません。

③受取時に税金が発生しにくくなる

運用益に対して税金がかからない分、受取時に税金がかかるのであれば意味がありません。

iDeCoで運用した資産を60歳以降に受け取る場合、その受取方法には2つのパターンがあります。

1つは一時金として、その全額を一括で受け取る方法です。

もう1つは、年金として5年以上20年以下の期間で分割して受け取る方法です。

このうち、一時金として受け取る場合は、退職金を受け取るのと同じ取り扱いとなります。
iDeCoの加入期間に応じた退職所得控除が計算されるため、税額が発生しにくくなるのてす。

また、分割して受け取る場合は、厚生年金や国民年金などの公的年金を受け取るのと同じ取り扱いとなります。
そのため、公的年金等控除額を計算して、受け取った金額から引いた後の金額のみが税金計算の対象となります。

3つの場面での特典を利用すれば節税+無税も

以上、3つの場面で税額が発生しにくくなる制度であるため、うまく利用すれば現役世代のうちは所得税や住民税の節税、受け取り時には税額ゼロということも考えられます。

iDeCoでどれだけの節税ができるのか

今回はサラリーマンの節税が大きなテーマですから、①掛金が所得控除の対象となる点を中心に確認していきましょう。

その前に確認しておく必要があるのが、iDeCoの掛金は各自自由に設定することができる一方、その金額には上限があることです。

iDeCoの掛金の上限

iDeCoの掛金の上限額は、その人の公的年金企業年金の加入状況により異なります。

まずは自分がどこにあてはまるのかを確認したうえで、その金額を知る必要があります。

①第1号被保険者の場合

自営業者などが該当する第1号被保険者の場合、掛金の上限額は68,000円/月です。

ただし、国民年金基金国民年金の付加保険料を支払っている場合は、これらの金額とあわせて68,000円となります。

②第2号被保険者の場合(企業年金、企業型確定拠出年金に加入していない人)

サラリーマンで厚生年金に加入する人のうち、企業年金や企業型確定拠出年金に加入していない人は、23,000円/月が上限額となります。

③第2号被保険者の場合(企業型確定拠出年金に加入している人)

20,000円/月が上限額となります。

この場合は企業年金に加入していないこと、企業型確定拠出年金の規約に個人型年金に加入できることが定められている必要があります。

④第2号被保険者の場合(企業年金に加入している人または共済組合員の人)

12,000円/月が上限額となります。

⑤第3号被保険者の場合(専業主婦・主夫)

23,000円/月が上限額となります。

節税効果額の計算

それでは、実際にiDeCoに加入した場合、どれだけの節税効果があるのでしょうか。

iDeCoに加入すると、その掛金の全額が所得控除の対象となります。

生命保険料控除のように、支払った金額から控除金額を求める必要はありませんし、控除される上限額もありません。

そのため、1年間に支払った金額の合計額に税率を乗ずれば、節税となった税額を計算することができるのです。

自営業者が上限額までiDeCoの掛金を支払った場合(復興特別所得税を含めた所得税率を10.21%とする)

 自営業者は①にあたるため、iDeCoの掛金の上限は68,000円/月となります。
そのため、年間の掛金の上限は816,000円です。

住民税率は一律10%ですから、復興特別所得税を含めた所得税率が10.21%の人の所得に対する合計税率は20.21%となります。

この場合の節税額は、816,000円×20.21%=164,913円です。

企業年金や企業型確定拠出年金に加入していないサラリーマンが上限額までiDeCoの掛金を支払った場合

企業年金や企業型確定拠出年金に加入していないサラリーマンは、②にあたります。
そのため、iDeCoの掛金の上限額は23,000円/月であり、年間の上限額は276,000円です。

所得税と住民税を合わせた合計税率は20.21%ですから、節税額の計算は以下のようになります。

276,000円×20.21%=55,779円

iDeCoを節税に利用することのメリット

iDeCoは、支払った掛金の全額をそのまま所得控除の金額とすることができます。

生命保険料控除の場合、支払った保険料から所得控除の金額を計算する必要があり、最大でも所得税について12万円までしか控除することができません。

極端なケースでは、1年間に100万円以上の保険料を支払っているのに、所得税の所得控除は4万円しかなく、実際の節税額は1万円にも満たないということも考えられます。

これに対して、iDeCoの場合は自営業者の場合、最大で80万円以上、サラリーマンでも最大27万円以上、所得金額を控除することができます。

そのため、iDeCoは節税効果が大きく、税負担を軽減する大きなメリットがあるのです。

iDeCo加入時の注意点

節税効果が大きいことから、iDeCoを利用したいと考え始めた方もいるかと思います。

ただ、iDeCoを利用する際には絶対に注意しなければならないことがあります。

それは、iDeCoで運用した掛金の受け取りは、60歳以降になるということです。

いくら掛金がすべて所得控除の対象になるとはいっても、節税となるのは支払った金額の15%~30%という人が多いと思います。

裏を返せば、支払った金額の7割から8割は、60歳以降にならなければ手元に戻ってこないということになるのです。

ところが実際には、60歳になるまでに結婚したり、マイホームを購入したりする人も多いでしょう。

また、子供の教育費にお金がかかるということも考えられます。

いくらiDeCoで運用している資金があったとしても、住宅の購入資金や教育資金として使うことはできないため、iDeCoを利用するとかえって、60歳になるまでの間は手元のお金が減ってしまうのです。

iDeCoを節税のために利用するのはいいのですが、60歳になるまでの間にいつ、どれくらいのお金が必要になるのか、よく考えてから実行するようにしましょう。