税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

税理士でもあるFPが日々考えていることを書きます

学資保険はオワコンなのか?

学資保険といえば、今でも子供の教育資金を確保するために最もポピュラーな手段の1つです。
しかし、ファイナンシャルプランナーや資産運用に長けている人の中には、その運用効率の悪さを理由に、学資保険不要論がかなり勢いを増しているように思われます。

果たして本当に学資保険は『オワコン』なのでしょうか。

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教育にお金はかかるものですが・・・(イメージ)

学資保険が不要といわれる理由

学資保険が不要といわれるのにはそれなりの理由があります。

1番の理由は、学資保険を利用した場合の返戻率がかなり低いことです。学資保険の内容は保険会社によってさまざまなので単純に比較するのは難しいのですが、他の保障をつけずに学資だけの保険として利用した場合、返戻率は105%前後となっています。学資を実際に受け取るのは17歳~22歳の間となっているわけですから、保険に加入してから受け取るまでの20年近く保険会社に運用をお願いしても、わずか5%程度しか増えないのです。自分で資産運用をしている人にしてみれば、これはかなり低い数値といえるでしょう。

ちなみに、学資保険の条件は以前よりかなり厳しくなっています。私が子供の学資保険の契約をした十数年前の場合、他の保障はなし、途中の祝い金の受け取りもなし、17歳に一括で受け取る条件として返戻率は110%を超えていました。しかし、現在同じような条件で学資保険の契約をすると、返戻率はかなり低くなっています。他の保険会社でも、受取時期を大学入学前の17歳・18歳に全額受け取るのではなく、大学在学中に毎年受け取るようにするなど、できるだけその時期を後ろにずらして、運用期間を少しでも確保しようとしていることが分かります。

2つ目は、何らかの事情により中途解約をすると元本割れすることです。これはどの保険でも起こりうることなのですが、学資保険についても例外ではありません。

3つ目にあげられるのは、保険会社が破たんした場合には当初の契約通りの学資を受け取ることができなくなることです。実際、過去には生命保険会社の経営破たんが何社も起こった時期がありました。この先も、そのような事態が発生する可能性は否定できませんから、保険に加入すること自体にもリスクはありますし、保険会社選びは重要なのです。

これらの理由により、生命保険会社の学資保険を利用するより、自分で資産運用しながら教育資金を確保する方がメリットがあると考えられているのです。

学資保険は「保険」である

確かに、支払った保険料に対して戻ってくる学資の増加がわずかしかなければ、学資保険本来の目的である教育資金の確保についての満足度は低くなってしまいます。ただ、現在の世界規模での金融市場の動向を考えると、保険会社が保険加入者に一律に支払う学資の金額としてはこれが限界なのかもしれません。

学資保険が貯蓄ではなく「保険」であるのには理由があります。それは、保険契約者が万が一亡くなった場合には、その後の保険料を支払わなくても学資を満額受け取ることができることです。実際にはそのようなことが起きない方がいいのですが、最悪の事態に備えるために利用するという点で、貯蓄や資産運用とは異なる存在価値があるのです。

自分で教育資金を確保できる人は必要ない

実際に学資保険を利用するといいのは、教育資金を普通の預貯金から切り離して確保することが難しい人や、毎月少しずつ貯蓄することが苦手な人です。

教育資金は、子供の成長とともに必要になりますが、そのための貯蓄がある日突然増えるわけではありません。特に大学入学前には、大学の入学金や学費だけでなく一人暮らしを始めるために必要なお金も多額になります。このようなお金を計画的に準備することができない人は、子供が小さなうちから少しずつ、普段使えないような場所に強制的に分けておく必要があるのです。

逆に、コツコツ貯めなくても教育資金をすでに確保できている人や、強制的な手段に頼らなくても教育資金を確保できる自信のある人は、運用効率の悪い学資保険を利用する必要はありません。

学資保険不要論を主張している人の多くは、学資保険がなくても教育資金を確保できる人、あるいは学資保険がなくても教育資金を貯めることのできる人なのです。

お金に色はついていない

よく「お金に色はついていない」と言われます。教育資金や住宅の頭金など、まとまった出費に備えてお金を分けておいても、いざとなればそのお金は自由に使えてしまいます。そのため、自分で自由に使えるお金を何かの目的を達成するまで使わずにおいておくのは難しいのです。

そのため、自分で自由に使えない状態にしておくことが有効となります。学資保険に加入すると、解約した場合に元本割れするデメリットがあると書きましたが、これこそが学資保険を利用する1つの理由なのです。

返戻率だけにとらわれず、本当に20年近くの期間にわたって、それだけの貯蓄を続けられるのかを考えてみましょう。そして、自分の意志が弱いと感じるのであれば、学資保険を利用することも検討してみましょう。