税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

税理士でもあるFPが日々考えていることを書きます

我が子が高校に入る際にどれくらいの学費がかかるのか(令和4年度 私立高校編)

子供が中学3年生となり高校受験を控えているため、高校入学後の学費を心配しなければならない状況となっています。もっとも、親としてはいろいろ心配になり情報収集をしていますが、肝心の子供はまだ修学旅行や部活やらで、それどころではないようですが。

ただ、子供はまだ本気になっていなくても、学費を準備しなければならない親としては、一日も早くその準備に取り掛かっておきたいところです。そこで、実際に高校に通い始めた時にどれだけの学費が必要なのか、調べておきましょう。

前回の公立高校に続いて、今回は私立高校の場合をご紹介します。

高校入学にかかる費用

公立高校の場合、学校に関係なく入学料や授業料は一律に定められていました。しかし、私立高校の場合は学校ごとに経営母体が異なるため、入学料や授業料の金額は異なります。また、これ以外の名目で入学時、あるいは年間を通して費用が発生する場合もあります。

愛知県内の私立高校における、入学料や授業料のモデルケースをいくつかご紹介します。

入学納付金 180,000円

授業料(年額) 420,000円

施設維持費(年額) 84,000円

その他会費(年額) 30,000円

入学金 220,000円

授業料(年額) 420,000円

施設設備費(年額) 72,000円

その他会費(年額) 7,800円

いろいろな学校があると思いますが、調べたいくつかの学校では、授業料に大きな差はないようです。もっとも、学校の違いだけでなく、特進やスポーツ、国際などのコースによっては大きな違いがある場合もあるため、必ずホームページなどで確認しておく必要があります。

高等学校等就学支援金制度を利用する

高等学校等就学支援金制度は、おもに高校に通う子供がいる保護者(親)の、授業料などの負担を軽減するための制度です。支援金として支給される金額は一律ではなく、その世帯の所得金額によって異なるため、支援金を受けられる人と受けられない人がいます。また、支援金の対象になる場合でも、所得金額によって実際に支給される金額は異なるため、注意が必要です。

私立高校に通う場合の支給額

子供が公立高校に通う場合の支援金は、年間118,800円が上限とされていました。これに対して、私立高校(全日制)に通う場合の支給額は、最大で396,000円となっています。

先ほどご紹介した私立高校2校については、いずれも授業料が年間420,000円となっていたため、支援金の条件に該当すれば420,000円のうち396,000円の支援を受けることができ、実質的な負担は24,000円になるのです。

このような制度となっているため、私立高校に進学しても「実質無償化」されていると言われます。ただ、実際には授業料が必ず無償となるわけではなく、また、授業料以外の負担については変わらず発生するため、勘違いしないようにしなければなりません。

なお、所得金額がある水準より大きくなると、396,000円の支給を受けることはできなくなり、支給額は公立高校の場合と同じく118,800円になります。さらに所得金額が大きくなれば、支給自体を受けられなくなります。こうなると、もはや私立高校の実質無償化とは関係なくなってしまうのです。

支給対象となるかどうかの判定

ここで問題となるのが、実際に支援金の対象となるのかということです。対象となるのであれば、私立高校も選択肢になると考える方もいるだろうと思われるからです。

両親のうち一方がサラリーマンの場合

私立高校に通う子供を持つ親への支援金は、その親の所得金額がいくらになるかによって変わります。両親のうち一方がサラリーマンとして働いている場合、支給額と年収の関係は以下のようになります。

○高校生の子供が1人いる場合

年収590万円未満であれば、最大396,000円の支援金

年収590万円以上910万円未満であれば、118,800円の支援金

○高校生の子供が2人いる場合

年収640万円未満であれば、最大396,000円の支援金

年収640万円以上950万円未満であれば、118,800円の支援金

○高校生と大学生の子供が1人ずついる場合

年収650万円未満であれば、最大396,000円の支援金

年収650万円以上960万円未満であれば、118,800円の支援金

両親が共働きの場合

両親が共働きの場合は、その2人の収入を合算して計算するため、以下のようになります。

○高校生の子供が1人いる場合

年収660万円未満であれば、最大396,000円の支援金

年収660万円以上1,030万円未満であれば、118,800円の支援金

○高校生の子供が2人いる場合

年収720万円未満であれば、最大396,000円の支援金

年収720万円以上1,070万円未満であれば、118,800円の支援金

○高校生と大学生の子供が1人ずついる場合

年収740万円未満であれば、最大396,000円の支援金

年収740万円以上1,090万円未満であれば、118,800円の支援金

サラリーマンでない場合

サラリーマンの親がいる場合には、その年収から支援金の対象になるかどうかの判定を行いました。しかし、個人事業主の方については、売上金額が同じでも必要経費が異なれば所得金額が違うため、単純に年収(売上高)だけで対象になるかどうかを判定することはできません。そこで、原則どおりに所得金額から判定を行う必要があります。

まず、判定基準を確認しておきます。

「市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額」

この金額が154,500円未満であれば、最大396,000円の支援金

この金額が154,500円以上304,200円未満であれば118,800円の支援金

このうち、市町村民税の調整控除の額は少額であり、全体に与える影響は少ないことからここでは無視して考えるものとします。すると、396,000円の支援金を受けるためには、課税標準額が154,500円÷6%=2,575,000円未満でなければならないことがわかります。

年収590万円のサラリーマンが配偶者控除の適用を受け、高校生の子供が1人いる場合、サラリーマンの課税標準額が2,575,000円未満になるのは、以下のようなケースです。

モデルケースでは、生命保険料控除や地震保険料控除などの控除額を、一切考慮していないと思われます。また、社会保険料控除の金額も、実際はもう少し大きな金額になる可能性があります。

このモデルケースを自営業者にも当てはめてみると、売上高-必要経費で計算される事業所得の金額が428万円未満でなければなりません。自営業の方は確定申告をしていると思われるので、この事業所得の金額がいくらになっているか確認しておきましょう。

学費の準備は早い方がいい

親の学費の準備状況によって、子供の選択肢を狭めるようなことがあってはいけません。そのためにも、早めに準備しておくことが大切です。ただ預金口座に入れておくだけではお金は増えないので、学資保険や積立NISAなどを上手に活用し、少しでも我が子の選択肢を広げ、子供の可能性を広げられるような準備をしておきましょう。

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我が子が高校に入る際にどれくらいの学費がかかるのか(令和4年度 公立高校編)

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私事ですが、私の子供が中学3年になり受験生となりました。もっとも、まだ受験に向けて緊張感が高まるとか、勉強に一段と気合いが入るといった雰囲気は一切ありませんが。

子供が受験するからといって親が代わりに勉強するわけではないため、親にできることは情報収集とお金の準備だそうです。中学校で行われた進路説明会でも、子供の選択肢を狭めないために、今からでもいいのでお金を準備をしておいて下さいと言われました。FPや保険会社の人などに言われるより、学校の先生に言われると重みがあります。

そこで、これから高校受験する人がどれくらいお金を必要とするのか、その金額をザッと計算してみましょう。ここでの計算は私の頭で思いつくものに限られるため、それ以上にお金がかかる場合もあると思います。まずは公立高校へ進学を考えている場合の費用です。

高校入学にかかる費用

東京近郊・大阪近郊に住む方は、中学受験を経験している方も多くいると思います。しかし、私が住む愛知県のような地方の場合、私立中学の受験をする人は限定的で、多くの生徒は地元の公立中学に進みます。そのため多くの生徒が、15歳にして初めて公立高校へ入るための入試を受けることとなります。

そのため子供を持つ親も、子供が中学校を卒業するタイミングで初めて、その後の学費について考えることとなります。

愛知県の公立高校(全日制)の学費は、以下のように定められています。

  • 入学料 5,650円
  • 授業料(年額) 118,800円

もっとも、ほとんどの都道府県の公立高校の入学金・授業料はこの金額になっているようです。わずかに異なる都道府県もいくつかあるようですが、100円程度の違いなのでほとんど問題にはなりません。

私立高校や私立大学にかかる学費を目にする機会が多いため、このシンプルな表記は非常に分かりやすいです。
3年で卒業してくれれば、授業料の総額は356,400円となるのです。

ただ、これですべてではない点に注意が必要です。学校で使う教材費、学校の制服代や体操服代、そして部活にかかる費用、通学定期代など、実際は人によってかかる費用はまちまちです。

高等学校等就学支援金制度を利用する

高等学校等就学支援金制度は、高校等に通う生徒の授業料の負担を支援する制度です。世帯ごとの所得金額や通学する学校によって、その支援の有無や内容が異なるため、条件をよく確認しておく必要があります。

全日制の公立高校に通う生徒がいる場合、両親の一方が働いている場合と両親共働きの場合では、その目安の金額が異なります。

両親のうち一方が働いている場合(高校生の子供1人) ➡ 年収約910万円

両親共働きの場合(高校生の子供1人) ➡ 年収約1,030万円

ここで注意しなければならないのは、両親共働きの場合には、両親の収入の合計で計算することとなる点です。ただし、一方が他方の配偶者控除に入っている場合は、2人の年収を加算する必要はなく、1人の年収だけでの判定となります。パートで配偶者の扶養に入っている場合には、一方が働いている場合となるのです。

公立高校に通う場合、授業料の年額118,800円だけが支援金の対象となります。そこで、この年収を上回らなければ、満額の支援金を受けることができるのです。

なお、文部科学省のホームページには、所得基準に相当する年収の目安が紹介されています。扶養控除の対象となる人が他にもいる場合は、年収の基準額は少し高くなります。高校生の子供以外にも高校生や大学生の子供がいる、あるいはいずれかの親が扶養に入っている場合は、こちらのページを確認してください。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/20210317-mxt_kouhou02_2.pdf

残念ながら(?)、私は年収基準には引っかからないので、この支援金を受けることができそうです。ただし、授業料以外の支出については支援の対象にならないため、その分の準備をしておく必要はありそうです。

実際に年収910万円となるサラリーマンの計算事例

高等学校等就学支援金制度を利用して、公立高校の上限額である118,800円の支給を受けるためには、サラリーマンの年収が910万円以下であることが目安となります。

ここで「目安」という表現を使っているのは、支援金の適用条件は収入金額ではなく、以下の算式によって決められているからです。

課税所得額×6%-市町村民税の調整控除額 < 304,200円未満

このうち「市町村民税の調整控除額」は、1,500円から2,000円程度の金額になりますが、計算上は大きな影響がなく無視しても結果はほぼ変わりません。

また、「課税所得額」は税率を乗じる前の金額であり、住民税の計算の基礎となる金額です。この金額に6%を乗じて304,200円未満になるようにするには、課税所得額は304,200円÷6%=507万円未満となる必要があります

なお、年収910万円のサラリーマンのモデルケースで、課税所得額が507万円となるのは、以下のようなケースです。

  • 年収(額面) 910万円
  • 社会保険料 93万円
  • 配偶者の所得金額0円のため、配偶者控除の適用あり
  • 子供1人が高校生のため、扶養控除(一般)あり

実際には、社会保険料の金額はもう少し大きくなったり、生命保険料控除や地震保険料控除の適用を受けたりする場合があるため、910万円を超えたからといって直ちに対象から外れるということはなさそうです。

サラリーマン以外の方の所得基準は?

この支援金にある年収基準のように、「いくらまでの収入であれば対象になる」という金額が明らかにされている場合、その金額はたいてい給与収入となっています。

この時に困るのは、サラリーマンでない自営業の方です。近年では、副業の収入を申告している方もいるため、サラリーマンでも給与収入以外に所得がある人も多くいます。そこで、サラリーマン以外の方が支援金の支給を受けるための要件を確認していきましょう。

収入金額と所得金額の関係

要件を確認する前に、収入金額と所得金額の違いについて簡単に説明しておきます。

収入金額とは、サラリーマンであれば額面金額、自営業の方であれば売上高に相当します。サラリーマンの方で年収1,000万円という場合、その金額は額面金額、つまり総支給額を指すのです。

これに対して、収入金額から仕入高や家賃・光熱費などの経費を差し引いた後の金額が所得金額となります。サラリーマンの方については、給料を受け取る際に必要な経費はありませんが、税金計算上は必要経費に相当する「給与所得控除」の金額を収入から差し引いて所得金額を計算するものとされています。

サラリーマンの場合

額面金額(収入金額)-給与所得控除=給与所得

自営業の方の場合

売上高(収入金額)-仕入高・必要経費=所得金額

給与収入910万円の場合の給与所得はいくらになる?

まずは、118,800円の支援金の支給を受けるための目安となっている「給与収入910万円」の場合、給与所得がいくらになるのかを考えてみましょう。

給与所得控除の金額は、以下の表を使って計算します。

この表から、給与年収910万円の場合、給与所得控除の額は195万円になると分かります。

また、給与収入が850万円を超え、23歳未満の扶養親族がいる場合は、所得金額調整控除という控除額が適用されます。これにより、「(給与収入額-850万円)×10%」で計算される金額が給与所得金額から控除されます。なお子の算式では「給与収入額」は1,000万円が上限となるため、最大で15万円が控除されます。これは給与所得者のみに適用される控除ですが、年収910万円のサラリーマンの所得金額を考える場合には考慮しておく必要があります。

したがって、この場合の給与所得金額は以下のように計算されます。

収入金額910万円-給与所得控除額195万円-所得金額調整控除6万円=給与所得金額709万円

事業所得の人は所得が709万円以下になるように

事業所得や不動産所得がメインの収入となっている人は、「売上高-仕入高・必要経費」の金額が709万円以下であることが、118,800円の支給を受けられる目安となります。

ただ、この金額はあくまでも目安であり、扶養家族の人数が多い場合や、生命保険料控除・地震保険料控除などの適用を受ける場合には、これより大きな金額でも支援金の対象となるケースがあるのです。

学費の準備は早めに行う

公立高校に進学する希望の子供がいる場合、親などの保護者の所得状況により支援金を受けられる場合もありますが、中には支援金の対象にならないケースもあります。

このような場合には、あらかじめ教育資金の準備をしておかなければなりません。学資保険を利用する方法、積立NISAなどを利用して資金を貯める方法などが考えられるため、どの方法がいいのか検討したうえで準備しておきましょう。

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サラリーマンの節税の効果を考える(3)ふるさと納税

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サラリーマンが納税する金額を減らすために、節税策として実行できるものは限られています。
そこで、節税の効果があるものを紹介しながら、その節税額やリターンとしてどのような利益を得ることができるのか、みていきましょう。

今回ご紹介するのは、ふるさと納税です。

すでに多くの方が利用しているかと思いますが、制度の特徴を理解していないと、得をするどころか、損をしてしまう可能性もあります。
まずは制度の内容や特徴を理解し、意外な落とし穴にはまらないようにしましょう。

 ふるさと納税とは?

ふるさと納税とは、自分が住んでいる自治体以外の都道府県や市町村に寄付を行うと、その分、自分が住んでいる自治体に納める住民税や国に納める所得税の額が減少する制度です。

ふるさと納税を行うと、その金額に応じた返礼品を手に入れることができますが、これは絶対的なものではありません。
実際、返礼品を受け取らない形でふるさと納税を行うこともできるのです。
ただ、一般的には返礼品を受け取って得をするために利用されるのです。

ふるさと納税のメリット

ふるさと納税のメリットは、現在住んでいる自治体以外に寄付を行うと、その寄付した金額の大部分が、現在住んでいる自治体に納める住民税や所得税から控除されることです。

ただ、注意しなければならないのは、寄付した金額がすべて本来の税額から控除されるわけではないことです。
控除額の計算には上限があるため、すべてをふるさと納税の寄付とすることはできないのです。

一方で、寄付する金額が上限を超えなければ、寄付した金額から2,000円を除いた金額が税額から控除されます。
つまり、自己負担2,000円で全国各地の特産品や生活用品、あるいは電化製品などを手にすることができるのです。

ふるさと納税のデメリット

ふるさと納税に大きなデメリットはありません。
あえてあげるとすれば、実際の納税額が増えてしまうことでしょうか。

住んでいる自治体以外に寄付した金額は、住民税や所得税から控除されますが、全額が控除されるわけではありません。
そのため、少なくとも2,000円は負担が増えることとなりますし、寄付する金額が大きすぎる場合には、それ以上の負担になることもあります。

ふるさと納税を行う際は、このデメリットを理解したうえで、自己負担を最小の2,000円に抑えることができるかが重要です。

ふるさと納税は節税ではない?

ところで、節税の方法の1つとしてふるさと納税が利用されているのに、実際の納税額が増えてしまうのはおかしいのではないかと思う方もいることでしょう。

どうして負担が増えるのに、節税と言えるのか、頭の中を整理しておきましょう。

実は納税額は減少しない

寄付した金額は、本来は現在住んでいる自治体に納める住民税や国に納める所得税から振り替えられた金額です。
ただし、全額が振り替えられるわけではないため、ふるさと納税をやみくもに行うと損をしてしまうのです。

寄付した金額とふるさと納税した後の所得税・住民税の合計額が、ふるさと納税を行う前の所得税・住民税の合計額から2,000円増えただけであれば、金額的な負担は最小限に収まっています。
ただ、この検証は非常に難しいため、実際には概算の所得金額から上限額を把握しておき、その中で寄付を行うこととなるのです。

返礼品で何をもらうかが成否の鍵

ふるさと納税をしても、寄付した金額の全額が税金から控除されるわけではないということは、自己負担しなければならない金額があるということです。
ただ、この金額は2,000円にまで抑えることが可能です。

そこで、この2,000円でどれだけの返礼品を手に入れることができるかが大きなポイントとなります。
2,000円の負担をしても、それ以上に価値のある返礼品を手にすることができれば、損をすることはありません。

逆に、自己負担を2,000円に抑えても、それだけの価値のある返礼品を手にしなければ、自己負担した金額は無駄な支出となってしまうのです。

寄付した金額と返礼品の金額の関係

基本的にふるさと納税をする人は、ネットショッピングをするように、自分の好みの返礼品を選んでいるため、損をしたという感覚はほとんどないと思います。
それでは、金額的に損をすることがあるのかどうかですが、この点はふるさと納税の寄付金額と、返礼品の調達額との関係を知っておくといいでしょう。 

一時、ふるさと納税の獲得競争が加熱し、その弊害が指摘される事態にもなりました。
そこで、現在は寄付金額の3割以下の金額で返礼品を調達しなければならないと定められています。
たとえば、1万円を寄付した場合の返礼品は、自治体が3,000円以下で調達、つまり購入していることとなります。 

正確な調達額は分かりませんが、1万円の寄付でも自己負担2,000円を超えるケースが多いと考えられるため、上限額を超えなければ金額的に損をすることはなさそうです。

また、この調達額は自治体が生産者や卸売業者から購入する時の金額であり、一般消費者が購入する際の金額より低い金額となるケースが多くなります。
消費者ベースで考えると、3割よりはるかに高い率となっていることもあるため、あまり金額面で細かく考える必要はないと言えます。

ふるさと納税で損をしないための上限額とは

ここまで見てきたように、ふるさと納税で重要なのは、自己負担額が2,000円を超えないようにしながら、できるだけ多くの寄付をできるかどうかです。

ただ、この上限額をどのように知るかで多くの人が頭を悩ませているのです。

上限額は簡単に計算できない

ふるさと納税の上限額を計算するのが難しいのは、正確にその金額を求めるためには、税金計算に関するあらゆる知識が必要なこと、そして住民税の計算は所得税の計算とは異なる部分があることが影響しています。
たとえばサラリーマンの方が必ず手にする源泉徴収票を見ても、その金額を求めることはできません。

上限額を知りたい方は、様々なふるさと納税ポータルサイトを利用して、その額を計算してみましょう。

www.satofull.jp

 

furunavi.jp


詳細に計算したい場合、ある程度の金額を知りたい場合で、使い分けるのもいいでしょう。

おおよその上限額を確認してから実行しよう

ふるさと納税を行うのに、上限額をまったく計算せずに行うのは、無謀と言わざるをえません。
少しでも得をしたいと考えてふるさと納税を行っているはずなのに、そのふるさと納税で損をしてしまっては意味がないのです。

必ず上限額を計算してからふるさと納税を行うようにしましょう。

まず最初に前年の実績にもとづいた計算をしておき、年末に近づいたら再度それまでの給料や賞与にもとづいた計算を行い、より正確な上限額を把握するようにしましょう。

サラリーマンの節税の効果を考える(2)iDeCo


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サラリーマンが所得税や住民税の節税を行う場合、所得控除や税額控除が認められるものを実行しなければなりません。

節税ができるものは限られているため、事前に何をするべきか、よく検討して実行することが重要です。

今回は、そのような所得控除が認められるもののうち、iDeCo(個人型確定拠出年金)についてご紹介します。

そもそもiDeCoとはどのような制度なのか、そしてそのメリットとデメリットを知ったうえで、節税の手段として利用することを検討しましょう。

 iDeCoとはどのような制度?

iDeCo知名度は、制度が始まった当初よりかなり上昇しています。

また、すでに利用しているという人も多いかもしれません。

ただ、依然としてその中身をご存知ない方もいるかと思いますので、改めてiDeCoとはどのような制度なのかを解説します。

iDeCoとは

iDeCoとは、個人型確定拠出年金の略称です。

個人型確定拠出年金は、現役世代として働いている間に掛金を拠出し、自らが定めた方針で運用を行い、積み立てた資産を自分で決めた方法で受け取る、というものです。

これだけ見れば、自分で株式や投資信託、債券などを購入するのと大差ないと思うかもしれません。

ただ、個人型確定拠出年金を利用すると、運用や受取に関するそれぞれの場面で、税額が少なくなるような3つの特徴があります。

①掛金が所得控除の対象となる

現役世代のうちは、給与所得や事業所得が発生し、毎年多くの税金を負担することとなります。

iDeCoを利用した場合、その掛金については全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の額が軽減されます。

②運用益が非課税となる

iDeCoのために拠出した掛金は、老後資金として受け取るまでの期間、金融商品を購入するなどして運用されます。
このように、長い期間にわたって運用を行うことで、当初拠出した金額より大きな金額を受け取ることができるようにするのです。

iDeCoにより運用を行う場合、どのような商品をいくら購入するのかは、利用者が自由に決めることができます。
その際、それまで保有していた商品を売却して、新たな商品を購入することもできます。

この時、仮に売却した金融商品が購入した時の金額より上昇していれば、売却益が発生することとなります。
通常は、金融商品を購入して利益が確定した場合、その利益に対して所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%の税金が課されます。

しかし、iDeCoで運用した結果発生した売却益については、課税の対象とはなりません。

③受取時に税金が発生しにくくなる

運用益に対して税金がかからない分、受取時に税金がかかるのであれば意味がありません。

iDeCoで運用した資産を60歳以降に受け取る場合、その受取方法には2つのパターンがあります。

1つは一時金として、その全額を一括で受け取る方法です。

もう1つは、年金として5年以上20年以下の期間で分割して受け取る方法です。

このうち、一時金として受け取る場合は、退職金を受け取るのと同じ取り扱いとなります。
iDeCoの加入期間に応じた退職所得控除が計算されるため、税額が発生しにくくなるのてす。

また、分割して受け取る場合は、厚生年金や国民年金などの公的年金を受け取るのと同じ取り扱いとなります。
そのため、公的年金等控除額を計算して、受け取った金額から引いた後の金額のみが税金計算の対象となります。

3つの場面での特典を利用すれば節税+無税も

以上、3つの場面で税額が発生しにくくなる制度であるため、うまく利用すれば現役世代のうちは所得税や住民税の節税、受け取り時には税額ゼロということも考えられます。

iDeCoでどれだけの節税ができるのか

今回はサラリーマンの節税が大きなテーマですから、①掛金が所得控除の対象となる点を中心に確認していきましょう。

その前に確認しておく必要があるのが、iDeCoの掛金は各自自由に設定することができる一方、その金額には上限があることです。

iDeCoの掛金の上限

iDeCoの掛金の上限額は、その人の公的年金企業年金の加入状況により異なります。

まずは自分がどこにあてはまるのかを確認したうえで、その金額を知る必要があります。

①第1号被保険者の場合

自営業者などが該当する第1号被保険者の場合、掛金の上限額は68,000円/月です。

ただし、国民年金基金国民年金の付加保険料を支払っている場合は、これらの金額とあわせて68,000円となります。

②第2号被保険者の場合(企業年金、企業型確定拠出年金に加入していない人)

サラリーマンで厚生年金に加入する人のうち、企業年金や企業型確定拠出年金に加入していない人は、23,000円/月が上限額となります。

③第2号被保険者の場合(企業型確定拠出年金に加入している人)

20,000円/月が上限額となります。

この場合は企業年金に加入していないこと、企業型確定拠出年金の規約に個人型年金に加入できることが定められている必要があります。

④第2号被保険者の場合(企業年金に加入している人または共済組合員の人)

12,000円/月が上限額となります。

⑤第3号被保険者の場合(専業主婦・主夫)

23,000円/月が上限額となります。

節税効果額の計算

それでは、実際にiDeCoに加入した場合、どれだけの節税効果があるのでしょうか。

iDeCoに加入すると、その掛金の全額が所得控除の対象となります。

生命保険料控除のように、支払った金額から控除金額を求める必要はありませんし、控除される上限額もありません。

そのため、1年間に支払った金額の合計額に税率を乗ずれば、節税となった税額を計算することができるのです。

自営業者が上限額までiDeCoの掛金を支払った場合(復興特別所得税を含めた所得税率を10.21%とする)

 自営業者は①にあたるため、iDeCoの掛金の上限は68,000円/月となります。
そのため、年間の掛金の上限は816,000円です。

住民税率は一律10%ですから、復興特別所得税を含めた所得税率が10.21%の人の所得に対する合計税率は20.21%となります。

この場合の節税額は、816,000円×20.21%=164,913円です。

企業年金や企業型確定拠出年金に加入していないサラリーマンが上限額までiDeCoの掛金を支払った場合

企業年金や企業型確定拠出年金に加入していないサラリーマンは、②にあたります。
そのため、iDeCoの掛金の上限額は23,000円/月であり、年間の上限額は276,000円です。

所得税と住民税を合わせた合計税率は20.21%ですから、節税額の計算は以下のようになります。

276,000円×20.21%=55,779円

iDeCoを節税に利用することのメリット

iDeCoは、支払った掛金の全額をそのまま所得控除の金額とすることができます。

生命保険料控除の場合、支払った保険料から所得控除の金額を計算する必要があり、最大でも所得税について12万円までしか控除することができません。

極端なケースでは、1年間に100万円以上の保険料を支払っているのに、所得税の所得控除は4万円しかなく、実際の節税額は1万円にも満たないということも考えられます。

これに対して、iDeCoの場合は自営業者の場合、最大で80万円以上、サラリーマンでも最大27万円以上、所得金額を控除することができます。

そのため、iDeCoは節税効果が大きく、税負担を軽減する大きなメリットがあるのです。

iDeCo加入時の注意点

節税効果が大きいことから、iDeCoを利用したいと考え始めた方もいるかと思います。

ただ、iDeCoを利用する際には絶対に注意しなければならないことがあります。

それは、iDeCoで運用した掛金の受け取りは、60歳以降になるということです。

いくら掛金がすべて所得控除の対象になるとはいっても、節税となるのは支払った金額の15%~30%という人が多いと思います。

裏を返せば、支払った金額の7割から8割は、60歳以降にならなければ手元に戻ってこないということになるのです。

ところが実際には、60歳になるまでに結婚したり、マイホームを購入したりする人も多いでしょう。

また、子供の教育費にお金がかかるということも考えられます。

いくらiDeCoで運用している資金があったとしても、住宅の購入資金や教育資金として使うことはできないため、iDeCoを利用するとかえって、60歳になるまでの間は手元のお金が減ってしまうのです。

iDeCoを節税のために利用するのはいいのですが、60歳になるまでの間にいつ、どれくらいのお金が必要になるのか、よく考えてから実行するようにしましょう。

サラリーマンの節税の効果を考える(1)生命保険料控除

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ライフプランニングを考えるうえで必ず話題になるのが、どのようにしたら節税ができるのか、ということです。

税金は、社会として、あるいは国家や自治体としてはなくてはならないものです。
ただ一方で、個人で見れば支払わないわけにはいかないが、何の見返りもない経費です。
そのため、節税することができれば、その分手取りの収入を増やすことができ、大きなメリットがあるのです。

個人事業主の方の場合は、必要経費が増えるとその分所得が下がり、税金の金額は減少します。
しかし、サラリーマンの方の場合は必要経費を計算しないため、法的に認められた方法でなければ、いくらお金を使っても節税をすることはできません。

そこで、節税には具体的にどのような方法があるのか、その内容をご紹介していきます。
また、節税することで税額が少なくなること以外に得られるリターンについて、解説します。
節税によるリターンについても知ったうえで、実行するようにしましょう。

何をすると節税できるの?

節税するためには、所得税や住民税の計算をするうえで、税額を減らすことが法的に認められた行為をしなければなりません。

税額を減らすことができるものとして認められているものには限りがあるため、その内容を知っておく必要があります。

税法上、所得金額や所得税額を軽減するものであり、すぐにでも実行できる節税の方法には、以下のようなものがあります。
(住宅ローン控除などは、実際にはすぐに実行できるわけではないですが)

このほかにも、節税効果のあるものはありますが、さしあたって節税を考える場合には、こういったものの中から検討する人が多いと思います。

また、すでに利用しているという人も多いかもしれません。

生命保険料控除を利用した場合を検証

先ほどあげた節税方法を実行するためには、すべてお金を支払う必要があります。
そこで、実際に節税効果を得るために、いくら支払う必要があるのか、そして、その結果どれだけの税額が軽減されるのか計算してみましょう。

ここでは、生命保険料控除について、その支払保険料に対する所得控除や税額軽減の効果を確認していきます。
所得税率は人によって異なりますが、ここでは復興特別所得税も含めた10.21%として計算します。
(なお、住民税はすべての人が一律10%となります。)

生命保険料控除の計算方法

生命保険料控除は、2011年以前の契約か、2012年以降の契約かによって、旧生命保険料控除と新生命保険料控除に区分されます。
ここでは、新生命保険料控除の金額について確認しておきます。

生命保険の内容により、「一般」「介護医療」「個人年金」の3つに区分します。
それぞれの区分ごとに、1年間に支払った保険料を集計し、所得金額から控除される金額を計算します。

 

所得税の生命保険料控除の計算方法は、以下のとおりです。

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また、住民税の生命保険料控除の計算方法は、以下のとおりです。

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例えば、1年間に一般保険料を50,000円、介護医療保険料を40,000円、個人年金保険料を120,000円支払っている場合の控除額は以下のようになります。

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この場合、1年間に支払った保険料の合計は21万円となり、そのうち生命保険料控除の対象となる金額は所得税で102,500円、住民税で78,500円となります。

税額への影響

先ほどの例で、所得税・住民税それぞれで所得金額が控除されると、税額にはどれくらいの影響があるのでしょうか。
生命保険料控除が適用されると、所得控除として計算された分、所得金額が減少するわけですから、この金額に税率を乗ずれば、税額に対する影響額を計算することができます。

この場合の計算は以下のとおりです。

所得税)102,500円×10.21%=10,465円

(住民税)78,500円×10%=7,850円

(合計)10,465円+7,850円=18,315円

結果的に、21万円の保険料を支払って、18,315円(8.7%)の節税になったのです。

生命保険料控除を利用することで得られる節税以外の効果とは?

生命保険料控除の適用を受けるためには、生命保険に加入する必要があります。
生命保険に加入すれば、いざという時に保障を受けることができます。

生命保険の保障の内容は、その保険の種類により様々です。
生命保険のように、アクシデントに対応するものもあれば、学資保険のように計画的に利用できるものもあります。

できればアクシデントはない方がいいのですが、いざという時の保障がないのは大きな不安となります。
そのため、保障の内容や金額をよく考えたうえで利用する必要があります。

また、学資保険のように保険金の入金時期や利率があらかじめ決められたものは、預金の代わりに利用することもできます。

ただ、保険会社の倒産などのリスクは常にあるため、保険金の支払いは絶対的なものではないことに注意が必要です。

生命保険料控除のメリットとデメリット

最後に、生命保険料控除を利用することのメリットとデメリットについて、簡単にまとめてみましょう。

生命保険料控除のメリット

生命保険料控除は、生命保険契約という多くの人が利用しているものが対象となるため、広く利用しやすい制度といえます。

加入の手続きも簡単ですし、支払う生命保険料も自由に設定できるため、最大限に生命保険料控除を適用できるようにすることができます。

生命保険料控除のデメリット

生命保険料控除は、支払う生命保険料が多くなるほど、支払金額に対する控除金額は少なくなります。

また、実際に税額に対する影響は所得控除の金額×税率で計算されるため、税率が高い人(=所得が多い人)ほど節税効果が大きくなり、逆に税率が低い人(=所得が少ない人)ほど節税効果は小さくなります。

そのため、生命保険契約を締結しても、思ったほど節税効果が得られないケースもあるのです。
特に税率が低い人の場合は、税額としての効果は限定的と言わざるをえません。

生命保険料控除の適用を受けるために生命保険契約を結ぶのであれば、その保険契約は無駄なものでないか、もう一度考える必要があります。

生命保険は保険の加入目的をよく考えて

生命保険を契約すれば、毎年多額の保険料を支払うこととなります。
生命保険料控除を適用すれば税額は軽減されるため、将来への備え以外にもリターンはあるはずと考えるかもしれません。

しかし、多くのサラリーマンが該当すると思われる所得税率10.21%(復興特別所得税含む)の場合、先ほどの計算例のように、支払った保険料の1割程度しか税額が軽減されないことも考えられます。
そのため、生命保険に加入すれば税額が減少するというのは、極めて限定的な話なのです。

また、保険に加入することで得られる税額以外のリターンは、すぐに発生するものではないことから、保険料の支払いが大きくなることで手取りの収入が減ってしまい、かえって生活が苦しくなる原因となることもあります。
生命保険の加入を考えている方は、その節税効果より、保険本来の加入目的や時期・金額などを考える必要があります。

不安な方は、ぜひ専門家のアドバイスを参考にして、保険の加入を検討するようにしましょう。

副業していることを会社に知られたくない場合のただ1つの対策とは?

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副業することについては、以前は認めない会社が多かったのですが、今は副業を認める会社も増えています。
そのため、現在は副業していることが会社にバレても、特に問題にならないケースも多いのです。

ただ、今でも副業が禁止されている会社は少なくありません。
会社と従業員との間で取り決められた就業規則によって副業が禁止されている場合、従業員はそれに従う必要があるのです。

ところで、副業をしていることがバレてしまうのは、なぜなのでしょうか。

副業が禁止されている会社で副業をしている場合、知られたくないのは当然ですが、副業が解禁されていても、何をしているのか、あるいはいくらくらい収入があるのかは知られたくないという人が多いと思います。

そこで、どうして副業をしていることがバレてしまうのか、その理由を確認しておきましょう。

副業がバレる理由は「住民税」にある

副業として〇ーバーイーツの配達員をしており、会社の人の家に届けた、というようなことでもなければ、副業をしていることはバレないと考えるかもしれません。

しかし、住民税の課税方法のある特徴により、いとも簡単に副業していることがバレてしまう可能性があるのです。

その住民税の特徴とは、給与の支給を受ける会社で住民税を徴収し納税する、という支払の方法です。

また、前年の所得金額から計算された住民税を翌年に支払う、という時期の問題もあります。

この2つの特徴により、会社に副業など給与以外の所得があることがバレたり、そのおおよその金額が知られる可能性があるのです。

副業について知られるまでの流れ

それでは、実際に副業を始めた人がそのことを会社に知られるまでの流れを、具体例で確認していきましょう。

(登場人物)

Aさん

2020年から副業を始めた。本業の会社は、副業を行うことについては事前の届出制とし、許可を得る必要があるが、その手続きはしていない。2020年は本業の給与はボーナス減少の影響で減ったものの、副業では60万円程度の収入があった。

Bさん

Aさんが勤務する会社の総務兼経理の社員。この道30年のベテランで、会社の総務に関する業務を一手に担っている。

Cさん

Aさんが勤務する会社の社長。従業員思いの経営者だが、ルールには厳しい一面もある。

(副業を知られるまでの流れ)

①2020年3月~

Aさんは、Cさんが経営する旅行代理店に10年近く勤務しています。
2019年から会社としては事前に許可を得ていれば、副業を行ってもよいこととしていましたが、Aさんは2019年には副業は行っていませんでした。

ただ、2020年3月頃から新型コロナウイルスの影響で会社の仕事が減少し、給与にも影響が出ることが想定されたため、副業を始めることとしました。
本来は事前許可が必要なことは知っていましたが、「どうせバレないだろう」と思い、事前に許可を取ることはしませんでした。

始めは、会社の仕事が暇になる間だけと思っていましたが、なかなかコロナウイルスの影響が収まらない中、しだいに副業をする時間が増えてきました。
「会社に申請しないとヤバいかな・・・」と思う一方で、どうせバレることはないし、税金だけ納めていれば大丈夫だろうと、自分を鼓舞するようにもなっていました。

②2020年12月

毎年、会社で年末調整を受けるために、保険料の証明書や住宅ローン控除の書類を会社に提出しています。
今回は副業についての申告が必要となりますが、年末調整は同じように受ける必要があるため、会社に例年と同じように書類を提出しました。

その結果、年末調整では所得税が還付され、手取金額は前月に比べて10万円ほど増えました。

③2021年1月

Bさんは、会社が支給した給与について、給与支払報告書を従業員の住む市区町村に提出します。
この給与支払報告書は、市区町村役場が各従業員の住民税の額を計算する際に用いられる書類なのです。

④2021年3月

副業について確定申告をしなければならないため、1年間の収入金額と必要経費の計算を行いました。

収入金額は過去の記録を見れば簡単に集計できますが、経費としてどのようなものがあるのかを分かっていなかったため、領収書やレシートを保管しておらず、経費として落とせるものはほとんどありませんでした。

そのため、収入金額から支払時に差し引かれるシステム利用料という名の手数料を差し引いた後の金額が、雑所得としての金額になりました。
その結果、雑所得の金額は手取りの収入金額と同じ約60万円となったのです。

確定申告を行い、同時に発生した所得税を税務署に納付しました。

④2021年5月

市区町村は、給与支払報告書や確定申告の情報から、住民1人1人の住民税の額を計算します。
そして、5月中に従業員が勤務する会社に対して、住民税の金額を通知します。

この時、市区町村から送られてくる書類は、会社に対して交付される特別徴収義務者用の書類と、従業員に対して交付される納税義務者用に分かれています。

一般的に、納税義務者用の書類は、会社の人にその金額を見ることができないよう封がされています。
そのため、総務や経理に従事しているBさんであっても、Aさんの所得の内容を知ることはできないのです。

ただ、Bさんはさらに税金の計算に精通していました。
そのため、2020年12月の年末調整や2021年1月の給与支払報告書の作成段階で、副業の届けが出ていない従業員については住民税が確定するものとして、その金額をあらかじめ計算し、給与ソフトに入力していたのです。

しかし、市町村から送られてきた住民税の金額と照らし合わせると、Aさんの金額だけまったく一致しないことが判明しました。

これはおかしいと思ったBさんは、そのことを社長であるCさんに報告したのです。

⑤その後

Cさんに呼び出されたAさんは、副業をしているのではないかと問い詰められました。
確定申告さえしていれば問題はないと思っていたAさんは、「まさか・・・」と思いましたが、すべてをCさんに話しました。

Cさんは口頭で、今後はこのようなことがないようにとAさんに注意をしました。
一方で、コロナ禍の特別な状況にあることも考慮して、これ以上の重い処分はしないこととしたのです。

副業禁止でなくても手続きは忘れずに

副業をしていることを許可している場合でも、社内で手続きが必要なケースは考えられます。
その理由は、会社の秘密保持の観点から、例えば同業他社や取引先で副業を行うことは許可しないと考えられるためです。

今回のケースでも、Aさん以外の従業員はきちんと会社に許可をもらっていたため、Bさんのチェックを受けることもなかったのです。

事前に許可をもらうといったルールがある場合は、面倒でもそのルールを守る方がスムーズに事が運ぶのです。

住民税でバレないたった1つのチェックポイントがある?

副業について確定申告を行うと、住民税の金額が想定より大きくなるため、会社にバレる可能性があることはお分かりいただけたかと思います。

ただ、確定申告を行う際に、たった1つのチェックをいれるだけで、会社には一切バレない方法があります。

チェックすべき場所は、確定申告書の第二表の下の方にある「○住民税に関する事項」(確定申告書Bの場合は「○住民税・事業税に関する事項」)です。

この真ん中あたりにある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」に「特別徴収」と「自分で納付」の2つの選択肢があることがお分かりいただけるかと思います。

このうち「自分で納付」に丸をつけておけば、本業の会社に住民税の額が通知される時、給与所得の金額だけで計算された住民税が通知されるため、仮に副業していることを隠している場合でも、バレる心配はないのです。

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確定申告書B 第二表のチェックはここ!

ただ、このように確定申告書を記載しても、運が悪いと、市区町村のチェックをすり抜けて、会社にすべての計算をした後の住民税が通知されてしまう可能性があります。

一番大事なのは、会社のルールにしたがって副業を行うことなので、勘違いしないようにしてください。

また、会社に知られたくないという理由で確定申告をしないのはもってのほかなので、間違いないようにしましょう。

e-lifeplanning.hatenablog.jp

副業で得た収入は税金がかかる?かからない?

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サラリーマンとして、本業で収入を得る一方で、副業でもある程度まとまった収入があるという人もいるのではないでしょうか。
特に2020年は、新型コロナの影響で本業に大きな影響が出て、収入がマイナスとなる人がいました。
また、会社に出社することができず、リモートワークとなるケースもあり、思いどおりに仕事ができない状況となった方も多くいたかと思います。

そのような中で、少しでも収入を増やすために副業を行った方もいるのではないでしょうか。
しかし、副業で得た収入は、本業の会社から支給された給料のように、年末調整が行われていません。
そこで、副業で得た収入については自分で税金の計算を行う必要があります。

この税金の計算を行うのが、確定申告なのです。

 サラリーマンで確定申告が必要な場合

サラリーマンのような給与所得者は、通常は勤務先で年末調整を受けるため、自分で確定申告を行う必要はありません。

しかし、サラリーマンの中でも確定申告が必要な人については、しっかりと国税庁のホームページに明記されています。

www.nta.go.jp

給与所得者は確定申告が必要ないことを前提としつつも、以下の要件に該当する場合は、必ず確定申告をしなければならないのです。

  1. (略)
  2. 1か所から給与の支払いを受けており、給与所得(及び退職所得)以外の所得金額の合計額が20万円を超える人
  3. 2か所以上から給与の支払いを受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得(及び退職所得)以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
  4. (以下略)

確定申告が必要な人のうち、副業をしている人に関係する可能性がある項目を抜き出しました。

多くの人が、この2つのパターンにあてはまるかどうかで、頭を悩ませることとなるのです。

メインの収入が1つの会社から給与を支給される人(2.の場合)

2.の内容は、副業をしているサラリーマンの方に最も多いケースだと思います。
毎月1つの会社から給与を支給される一方、給与以外の方法で副業の収入を得ている場合です。

このポイントは、①メインの収入が1つの会社から支給される給与であること、そして②副業の所得が給与所得でないこと、③所得金額が20万円以下であることの3点です。

まず①ですが、メインの収入について1つの会社から支給される給与であれば年末調整の計算が行われているため、特別な理由がなければ確定申告は必要ありません。
大部分の所得金額については、すでに税金の計算が終わっていることが前提となるのです。
そのため、たとえば年の途中で転職して実際には2つ以上の会社から給与をもらっている場合でも、年末に在籍していた会社ですべてを含めて年末調整を行っているのであれば、①の要件は満たします。

次に②ですが、もし副業により得た所得が給与所得に該当する場合は、3.の内容により確定申告の要否を判定する必要があります。
給与所得に関しては、そのすべてが年末調整により税額が精算されていることが前提となっているのです。

最後に③ですが、所得金額が20万円以下であっても、本来は税額が発生します。
しかし、納税者にとっての確定申告の手間や、税務当局にとっての事務の手数を考慮して、20万円以下であれば申告不要となっているものと考えられます。
したがって、20万円という金額については、合理的な理由はありません。

なお、所得金額の考え方は「収入金額-必要経費」であり、単に売上金額や手取金額で判定するものではありません。
特に商品を仕入れて売っている場合には、その差額が所得金額の基礎となるため、間違えないようにしましょう。

2つ以上の会社から給与を支給される人(3.の場合)

2か所以上の勤務先から給与を支給されている人については、そもそも、その給与のうち年末調整を受けているのは、1番メインとなる勤務先からの給与だけのはずです。
そのため、年末調整を受けた給与と、年末調整を受けていない給与について分けて考える必要があります。

そのうち、年末調整を受けていない給与の収入金額と、給与所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合には、確定申告をしなければなりません。
この場合、2か所目以降の給与については、給与収入の金額で判定することとなります。
本来、給与についても給与の収入金額と所得金額は異なるのですが、確定申告の要否のを判定する際、給与については給与所得ではなく給与収入の金額で判定するのです。

確定申告をしないとどうなる?

それでは、確定申告をしなかった場合、どのようなことになるのでしょうか。

結論から言えば、通常納めるべき所得税について納めるだけでなく、ペナルティとして追加の税額を納付しなければならなくなります。

たとえば、無申告加算税が科された場合、納付した税額の15%~20%の追徴税額が発生します。

また、延滞税が科された場合、銀行の利息とは比べ物にならないくらい高い率の利息計算が行われます。

結果的に、本来納めるべき税額に加えて、このようなペナルティの税額も納める必要があるため、大きな負担となるのです。 

確定申告しなくてもバレないんじゃないの?という疑問に対する答え

確定申告をしたくないと考える人の中には、確定申告をしなくてもバレないのでは、という考えが頭をよぎる人がいるかもしれません。
しかし、この考え方は非常に危険な考え方と言わざるを得ません。

金銭を受け取った人が申告するかどうかに関係なく、金銭を支払った会社や事業者は、その事実を税務署や市町村に報告しなければならないこととされているものがあります。

たとえば、従業員に対して支払った給料については、その従業員が住む市町村役場に対して、1年間に誰にいくら支払ったかを報告します。
また、報酬を支払った場合には、その会社や事業者の管轄の税務署に、1年間に誰にいくら支払ったかを記載した支払調書を提出します。
このような書類を提出している以上、税務署としても申告漏れを無視することはできないのです。

また、最近ではこのような書面だけでなく、税務署がフリマアプリやSNSなどの動きに目をつけているとも言われます。
多額の売買を行っている人については、確定申告が行われているのか、確認しているのです。
副業に限らず、様々な事業の形がある中で、税務署の目もまた、様々な方向に目を光らせているのです。