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副業していることを会社に知られたくない場合のただ1つの対策とは?

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副業することについては、以前は認めない会社が多かったのですが、今は副業を認める会社も増えています。
そのため、現在は副業していることが会社にバレても、特に問題にならないケースも多いのです。

ただ、今でも副業が禁止されている会社は少なくありません。
会社と従業員との間で取り決められた就業規則によって副業が禁止されている場合、従業員はそれに従う必要があるのです。

ところで、副業をしていることがバレてしまうのは、なぜなのでしょうか。

副業が禁止されている会社で副業をしている場合、知られたくないのは当然ですが、副業が解禁されていても、何をしているのか、あるいはいくらくらい収入があるのかは知られたくないという人が多いと思います。

そこで、どうして副業をしていることがバレてしまうのか、その理由を確認しておきましょう。

副業がバレる理由は「住民税」にある

副業として〇ーバーイーツの配達員をしており、会社の人の家に届けた、というようなことでもなければ、副業をしていることはバレないと考えるかもしれません。

しかし、住民税の課税方法のある特徴により、いとも簡単に副業していることがバレてしまう可能性があるのです。

その住民税の特徴とは、給与の支給を受ける会社で住民税を徴収し納税する、という支払の方法です。

また、前年の所得金額から計算された住民税を翌年に支払う、という時期の問題もあります。

この2つの特徴により、会社に副業など給与以外の所得があることがバレたり、そのおおよその金額が知られる可能性があるのです。

副業について知られるまでの流れ

それでは、実際に副業を始めた人がそのことを会社に知られるまでの流れを、具体例で確認していきましょう。

(登場人物)

Aさん

2020年から副業を始めた。本業の会社は、副業を行うことについては事前の届出制とし、許可を得る必要があるが、その手続きはしていない。2020年は本業の給与はボーナス減少の影響で減ったものの、副業では60万円程度の収入があった。

Bさん

Aさんが勤務する会社の総務兼経理の社員。この道30年のベテランで、会社の総務に関する業務を一手に担っている。

Cさん

Aさんが勤務する会社の社長。従業員思いの経営者だが、ルールには厳しい一面もある。

(副業を知られるまでの流れ)

①2020年3月~

Aさんは、Cさんが経営する旅行代理店に10年近く勤務しています。
2019年から会社としては事前に許可を得ていれば、副業を行ってもよいこととしていましたが、Aさんは2019年には副業は行っていませんでした。

ただ、2020年3月頃から新型コロナウイルスの影響で会社の仕事が減少し、給与にも影響が出ることが想定されたため、副業を始めることとしました。
本来は事前許可が必要なことは知っていましたが、「どうせバレないだろう」と思い、事前に許可を取ることはしませんでした。

始めは、会社の仕事が暇になる間だけと思っていましたが、なかなかコロナウイルスの影響が収まらない中、しだいに副業をする時間が増えてきました。
「会社に申請しないとヤバいかな・・・」と思う一方で、どうせバレることはないし、税金だけ納めていれば大丈夫だろうと、自分を鼓舞するようにもなっていました。

②2020年12月

毎年、会社で年末調整を受けるために、保険料の証明書や住宅ローン控除の書類を会社に提出しています。
今回は副業についての申告が必要となりますが、年末調整は同じように受ける必要があるため、会社に例年と同じように書類を提出しました。

その結果、年末調整では所得税が還付され、手取金額は前月に比べて10万円ほど増えました。

③2021年1月

Bさんは、会社が支給した給与について、給与支払報告書を従業員の住む市区町村に提出します。
この給与支払報告書は、市区町村役場が各従業員の住民税の額を計算する際に用いられる書類なのです。

④2021年3月

副業について確定申告をしなければならないため、1年間の収入金額と必要経費の計算を行いました。

収入金額は過去の記録を見れば簡単に集計できますが、経費としてどのようなものがあるのかを分かっていなかったため、領収書やレシートを保管しておらず、経費として落とせるものはほとんどありませんでした。

そのため、収入金額から支払時に差し引かれるシステム利用料という名の手数料を差し引いた後の金額が、雑所得としての金額になりました。
その結果、雑所得の金額は手取りの収入金額と同じ約60万円となったのです。

確定申告を行い、同時に発生した所得税を税務署に納付しました。

④2021年5月

市区町村は、給与支払報告書や確定申告の情報から、住民1人1人の住民税の額を計算します。
そして、5月中に従業員が勤務する会社に対して、住民税の金額を通知します。

この時、市区町村から送られてくる書類は、会社に対して交付される特別徴収義務者用の書類と、従業員に対して交付される納税義務者用に分かれています。

一般的に、納税義務者用の書類は、会社の人にその金額を見ることができないよう封がされています。
そのため、総務や経理に従事しているBさんであっても、Aさんの所得の内容を知ることはできないのです。

ただ、Bさんはさらに税金の計算に精通していました。
そのため、2020年12月の年末調整や2021年1月の給与支払報告書の作成段階で、副業の届けが出ていない従業員については住民税が確定するものとして、その金額をあらかじめ計算し、給与ソフトに入力していたのです。

しかし、市町村から送られてきた住民税の金額と照らし合わせると、Aさんの金額だけまったく一致しないことが判明しました。

これはおかしいと思ったBさんは、そのことを社長であるCさんに報告したのです。

⑤その後

Cさんに呼び出されたAさんは、副業をしているのではないかと問い詰められました。
確定申告さえしていれば問題はないと思っていたAさんは、「まさか・・・」と思いましたが、すべてをCさんに話しました。

Cさんは口頭で、今後はこのようなことがないようにとAさんに注意をしました。
一方で、コロナ禍の特別な状況にあることも考慮して、これ以上の重い処分はしないこととしたのです。

副業禁止でなくても手続きは忘れずに

副業をしていることを許可している場合でも、社内で手続きが必要なケースは考えられます。
その理由は、会社の秘密保持の観点から、例えば同業他社や取引先で副業を行うことは許可しないと考えられるためです。

今回のケースでも、Aさん以外の従業員はきちんと会社に許可をもらっていたため、Bさんのチェックを受けることもなかったのです。

事前に許可をもらうといったルールがある場合は、面倒でもそのルールを守る方がスムーズに事が運ぶのです。

住民税でバレないたった1つのチェックポイントがある?

副業について確定申告を行うと、住民税の金額が想定より大きくなるため、会社にバレる可能性があることはお分かりいただけたかと思います。

ただ、確定申告を行う際に、たった1つのチェックをいれるだけで、会社には一切バレない方法があります。

チェックすべき場所は、確定申告書の第二表の下の方にある「○住民税に関する事項」(確定申告書Bの場合は「○住民税・事業税に関する事項」)です。

この真ん中あたりにある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」に「特別徴収」と「自分で納付」の2つの選択肢があることがお分かりいただけるかと思います。

このうち「自分で納付」に丸をつけておけば、本業の会社に住民税の額が通知される時、給与所得の金額だけで計算された住民税が通知されるため、仮に副業していることを隠している場合でも、バレる心配はないのです。

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確定申告書B 第二表のチェックはここ!

ただ、このように確定申告書を記載しても、運が悪いと、市区町村のチェックをすり抜けて、会社にすべての計算をした後の住民税が通知されてしまう可能性があります。

一番大事なのは、会社のルールにしたがって副業を行うことなので、勘違いしないようにしてください。

また、会社に知られたくないという理由で確定申告をしないのはもってのほかなので、間違いないようにしましょう。

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