実際のところ、学費はどれくらいかかるのか?(高校の場合)
学費がどれくらいかかるのか、様々な統計から分析する第二弾は高校編です。
そもそも、高校は「授業料の無償化」が行われているのではないのかと考える人もいるかもしれませんが、実際はそれほど単純な話ではありません。
高校に通う場合の学費は、公立高校と私立高校とで大きく違いますし、授業料以外、また学校以外の支出も大きな金額になります。より幅広く、高校在学中に必要な費用を見ておきましょう。
公立高校の学費
ここでは、文部科学省が公表した「平成30年度子供の学習費調査の結果について」のデータをご紹介します。
この調査では、幼稚園から高校まで公立と私立の別で、教育関係の費用が一年間にいくらかかったのか、その平均を計算しています。
これによれば、平成30年度に公立高校に通う高校生の学習費の総額は457,380円、そのうち学校教育費が280,487円、学校外活動費が176,893円となっています。
学校教育費の内訳
学校教育費とは、学校に通って教育を受けるために必要な費用のことです。
学校に支払う授業料だけでなく、制服などの学用品を購入するための費用や修学旅行などの学校活動に必要な費用も含まれます。
学校教育費の内訳を見てみると、通学関係費79,432円、学校納付金等55,360円、図書・学用品・実習材料費等41,258円、教科外活動費40,427円となっています。
授業料などとして学校に支払う金額より大きいのが、学校に通学する際にかかる定期代などの交通費ということになります。
この調査では、学校教育費の4分の1以上をしめるという結果になっています。
この通学にかかる支出というのは、意外に盲点となっている可能性があります。
なお、国公立高校に通う場合、高等学校等就業支援金制度により118,800円が支給されます。この金額であれば、学校に支払う授業料の全額が賄える計算となります。
学校外活動費の内訳
学校外活動費として最も大きな支出となるのは、学習塾や習い事の費用です。
公立高校に通う場合、自宅学習や塾、家庭教師などに支払う補助学習費は14.8万円、習い事などに支払うその他の学校外活動費が3.0万円となっています。
特に高校生の場合は、大学受験などを控えているため、習い事よりも学習塾に支払う金額が大きくなる傾向にあります。
その中でも、難関大学などの受験を考えている場合には、補助学習費の金額はもっと大きくなることが考えられます。
私立高校の学費
それでは、私立高校に通う場合の学習費はいくらくらいになるのでしょうか。
先ほど紹介した「平成30年度子供の学習費調査の結果について」によれば、全国にある高校のうち私立高校の割合は30.5%、私立高校に通う生徒の割合は33.0%とのことです。
地域差が大きいとは思いますが、ほぼ3分の1の高校生が私立高校に通っていることとなるのです。
私立高校に通う高校生の学習費の総額は969,911円、そのうち学校教育費が719,051円、学校外活動費が250,860円となっています。
学校教育費の内訳
私立高校に通う高校生の学校教育費の内訳は、授業料230,026円、学校納付金等215,999円、通学関係費114,043円となっています。
授業料と学校納付金等を合わせた金額は、公立高校の約8倍、学校教育費全体では公立高校の約2.5倍となっていることが分かります。
なお、私立高校に通う場合、高等学校等就業支援金制度により支援金が支給されますが、それでも授業料が実質無償となるケースとそうでないケースがあります。
学校外活動費の内訳
私立高校に通う高校生の学校外活動費の内訳は、自宅学習や塾、家庭教師などに支払う補助学習費が19.4万円、習い事などに支払うその他の学校外活動費が5.7万円となっています。
私立高校の場合、学校が授業以外にもよく面倒をみてくれるため、学校以外に支払う金額は少なく済むなどと言われることもありますが、必ずしもそのとおりではない調査結果となりました。
もっとも、私立高校に関しては学校によって教育内容や学費に差があるため、この平均額を参考にならないケースもあります。実際に進学を考える場合には、学校ごとの実態を調べる必要があります。
在学中にかかる総額
この統計とは別に、日本政策金融公庫が調査した「令和元年度『教育費負担の実態調査結果』」では、高校や大学の在学期間中にかかる費用を調べています。
この調査では、公立高校と私立高校の別になっていませんが、高校入学から卒業までの3年間の費用の総額は以下のとおりです。
- 入学費用(受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金の合計)
30.3万円 - 在学費用(学校の授業料、通学費、教科書代など+塾の月謝など)72.8万円
- 3年間の総額248.7万円
最初に見た文部科学省の統計の金額を、公立・私立の別にせず平均値を求めると、日本政策金融公庫の統計にある在学費用に近い金額になります。
これに、高校入学にかかる費用を加えれば、おおよそ同じくらいの金額になるといえるでしょう。
高校在学のための教育費も負担は大きい
大学に通うために必要な教育費については、かなり早い段階から準備していることが多いのですが、高校に通うための費用についてはあまり考えていないという人が多いと思います。
しかし、このような統計を見てみると、高校に通う3年間の支出はかなりの金額になることが分かります。
高校については授業料の無償化が実施されるなど、負担が少なく済むようにも思われますが、実際には授業料以外の金額の方が大きく、家計にとって大きな負担になることは変わりがありません。
学資保険に入る際には、15歳になって高校に入学する前に保険金を受け取るようなプランを検討しておくのも、このような支出に対する備えとなるでしょう。