税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

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iDeCoってそんなにメリットがあるの?

iDeCoという名前を聞いたことがある人は多いと思います。もしかしたら、すでに加入しているかもしれません。ただ、iDeCoに加入していても加入していなくても、その中身はよく分からないと感じている人も多いのではないでしょうか。
iDeCoには多くのメリットがあるため、加入することに損はないかのように言われますが、本当にiDeCoにデメリットはないのでしょうか。ここでは、iDeCoのメリットと加入時の注意点について考えてみます。

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iDeCoの加入者は年々増加している

iDeCoとは、掛金を拠出したうえで自分で運用方法を選択して運用し、60歳以降にその掛金と運用益を合わせた給付金を受け取るというものです。公的年金だけでは老後の資金が不足してしまうため、自分でその資金を準備しておこうと考える場合の選択肢の1つとして利用されています。

iDeCoが広く利用されるようになったきっかけは、2017年1月に公務員や主婦、企業年金のある会社員も加入することができるようになったことです。これを1つのきっかけに、加入者数は大きく増加しています。

2016年12月 306,314人(190,354事業所)

2017年3月 430,929人(220,422事業所)

2018年3月 853,723人(323,579事業所)

2019年3月 1,210,037人(404,074事業所)

2020年1月 1,492,728人(467,740事業所)

運営管理機関連絡協議会作成の統計資料より

こうしてみると、加入者の要件が緩和された2017年以降に、加入者が増えていることが分かります。特に2017年3月と2018年3月を比較すると、加入者でほぼ倍増し、登録事業所の数も1.5倍程度に増加しています。

このことから、同じ事業所の中でiDeCoの加入者が増加しているといえます。実際、加入者を登録事業所の数で計算した1事業所あたりの加入者数を見ると、2016年12月1.61人だったのが2017年3月1.96人、2018年3月には2.64人と大きく増えています。その後も増えて、直近の2020年1月では、3.19人にまで増えています。

ネットでも雑誌でも、iDeCoの情報はかなり豊富にあるため、そのような情報をもとに加入者が増えているように感じるかもしれません。しかし、実際にはそのような情報よりも口コミの方が加入者の増加に貢献しているかもしれません。また、iDeCoに加入する際は勤務先での手続きが必要となるため、その手続きに慣れた事業所が増えていることも、加入者が増える一因となっているようです。

iDeCoには3つのメリットがある

iDeCoに加入した場合のメリットは、大きく3つあるといわれます。

  1. 拠出した掛金は全額が所得控除の対象になる
  2. 運用期間中に生じた運用益には税金がかからない
  3. 受取時に公的年金等控除あるいは退職所得控除の適用を受けられる

1の拠出した掛金が全額所得控除の対象になるというのは、働いている間に受けられるメリットです。iDeCoに加入すると、その人が会社員が自営業者か専業主婦かによって決められた上限額以内であれば、拠出する金額を自分で設定することができます。そして、その拠出した金額は、年末調整や確定申告を行う際に、全額が所得控除の対象となります。
サラリーマンの場合、多くの人は所得税と住民税あわせて15%あるいは20%で課税されているため、年間掛金の15%か20%の税額が節税できることとなります。

2の運用益が非課税となることも、掛金を拠出し運用している間に受けられるメリットです。株式や投資信託を購入して売却益が発生したり、配当金や分配金を受け取った場合、その利益に対して約20%の税金がかかります。しかし、iDeCoで運用した場合に発生した利益については非課税とされているのです。

3のメリットは受取時に受けられるメリットです。iDeCoで運用したお金は、60歳以降に一時金または年金で受け取ることとなります。いずれの受取方法にするかは自分で選択することができます。この時、一時金として受け取るのであれば退職所得控除額が適用されます。また、一時金として受け取るのであれば公的年金等控除が適用されます。その結果、受け取る金額の全額が所得税の対象にならないようにされているのです。

3つのメリットについて考えてみると違和感を感じるものも

この3つのメリットがあることから、iDeCoに加入する方が圧倒的に有利であるように思われます。しかし、このメリットの中には、よくよく考えてみるとおかしなものもあります。

それは3つ目のメリットにある「受取時に公的年金等控除あるいは退職所得控除の適用を受けられる」ことです。受取時に全額が税金計算の対象にならないことは、受け取る人にとっては大きなメリットだと考える人は、もう一度そのお金の出どころについて考えてみてください。そもそも、iDeCoに加入している人が受け取る給付金には、自分が過去に拠出したお金が含まれているのです。

つまり、現役中には使わないように別の財布に分けて入れておいた自分のお金を、老後に使おうと思って手元に持って来ただけなのに、税金がかかってしまうのです。これは、メリットどころか大きなデメリットといってもいいかもしれません。

ちなみに、iDeCoを利用しないで購入した有価証券や投資信託は、売却した金額から購入した金額を差し引いた後の利益に対して課税されますが、購入した時の金額分については、あくまで自分のお金が戻ってきただけなので、課税の対象にはなりません。このような考え方は、有価証券などの金融商品を購入した時だけでなく、土地などの不動産を購入した場合や、卸売業・小売業などの事業者に対して課される所得税法人税の計算においても用いられる、会計上・税務上の基本的な考え方です。

なぜiDeCoの税制を整備する際に、自分で拠出した金額に相当する金額については原価に相当するため課税対象としないこととしなかったのか、大いに疑問が残るところです。しかし、今となってはこの税制に変更がなされるとも考えられません。この点について理解したうえで、それ以外のメリットをふまえて、上手にiDeCoを利用する方法を考えていくといいのかもしれません。