税理士FPの日々鍛錬 ~go my way~

税理士でもあるFPが日々考えていることを書きます

緊急事態宣言下の決算作業の不安

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で7つの都府県に緊急事態が宣言される中、企業の事業継続にもさまざまな工夫がなされ、報道でも取り上げられています。

しかし、在宅勤務やリモートワークといった取り組みができたり、時差出勤や交代制の勤務ができる企業ばかりではありません。また、同じ会社の中でも在宅勤務ができる業務とできない業務があります。

そんな中、これから3月決算法人の業務が本格化することについて、危惧しています。

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個人の確定申告については期限の延期が行われた

個人を対象とした確定申告については、感染拡大を防ぐため、1か月の申告期限の延期が行われ、その後さらに新型コロナウイルスの影響がおさまるまで、実質的に申告できなくても問題ないこととされました。

これは、個人の納税者が税務署に特定の時期に税務署や確定申告会場に集まり、感染が拡大することを防ぐ目的があったと思われます。

実際、例年であれば大混雑となる3月の確定申告会場が、今年はそれほど混んでいないように思われました。電子申告やスマホでの申告が普及してきたとの意見もあるようですが、確定申告を行う人は高齢者が比較的多いことから、申告期限が延長された効果があったのだと思います。

また、税務署の職員に感染者が出たというニュースはありましたが、税務署での集団感染は今のところ発生していないことからも、一定の効果はあったのだと思います。

法人税の申告書作成の現場は密閉に近い

法人の決算作業は、法人の決算期によって時期が異なるため、すべての法人でこれから決算を迎えるわけではありません。しかし、3月決算法人は最も数が多く、既に決算作業が始まっているところがあります。この先、3月決算法人の作業はゴールデンウィーク明けに向けて本格化していきます。

法人の申告業務は、個人の場合と違って税務署に納税者が集まることはありません。会社の担当者が大挙して税務署に出かけることはなく、申告書類の郵送または電子申告で完結するため、税務署で集団感染が起こる可能性はほぼゼロでしょう。

しかし、決算作業の現場ではそうはいきません。決算作業は会社の担当者だけで行うケースもありますし、税理士が申告書を作成するために会社に行く場合もあります。また、上場企業や規模の大きな会社では、公認会計士による監査も行われますが、いずれも会社内の非常に閉鎖的な場所で行われることが多いのです。

なぜ閉鎖的な場所で決算作業が行われるのでしょうか。それは、利益や役員報酬、給与などの人件費など、会社のあらゆる数字が明らかになるため、ごく限られた人だけしかその数字を見ることができないようにするためです。

私自身も上場企業から中小・零細企業まで様々な会社の決算にお邪魔していますが、どの会社もできるだけ大勢の従業員がいない場所で作業を行います。ひどい場合は窓もないような部屋で作業を行うこともあります。そうしなければ、作業するスペースはありませんし、会社の機密を守ることができないのです。

おそらく、日本中の3月決算法人がこれから決算業務を本格化させていくうえで、どのような形で作業を行うか頭を悩ませると思います。

解決策は申告期限の延長しかない

法人の決算業務に携わる人たちは、今後「3密」を避けつつ作業を行うことは難しく、非常に不安を感じていると思います。また、中小企業などはすでに事業継続に黄信号が灯っているケースもある中で、決算作業よりも先に資金繰りや取引先・金融機関との交渉を進めたいというところも多いと思います。

はっきり言って、この状況で例年と同様に決算作業を行うことは無理だと思います。だとすれば、状況がある程度収まるまでは申告期限を延長し、その後順番に申告を行うようにするしかないと思うのです。

新型コロナウイルスが蔓延しても、経済を停滞させてはならないという意見があります。しかし、経済と感染症対策が両立しないからこそ、感染者が増加しているのが現実です。また、この先さらに感染が拡大すれば、いよいよ経済への影響は計り知れないものになるでしょう。経済への影響を最小限に食い止めたいのであれば、緊急事態宣言の内容をもっと強固なものにし、まずは感染拡大を抑える必要があると思います。

企業は納税したくて決算作業をしているわけではなく、しなければならないからしているのです。今すぐに決算をしなくてもいいのであれば、感染拡大を防ぐためにあらゆる方策を取ることができるはずですし、企業の継続のための活動に力を注ぐことができるはずです。また、納税自体を免除するというわけではなく、一時的に延長するということが、感染拡大を防ぐためにできることだと考えています。

緊急事態宣言にある中で、なぜ政府として申告・納税期限の延長という方針を打ち出すことがなぜできないのか、非常に不信感を抱いています。 

緊急経済対策でも言及はなし

なお、4月7日に公表された緊急経済対策では、「有価証券報告書等の提出期限に係る柔軟な取り扱い」を検討する旨が明記されています。

しかし、法人の申告期限に関する柔軟な取り扱いについての言及はありません。税制措置として書かれているのは、経済的に厳しい状況にある企業に対する税制上の措置ばかりです。

しかもここに書かれている内容は、「1年間の納税猶予」や「令和3年度1年分に限り固定資産税・都市計画税を2分の1またはゼロに」、「新規に設備投資を行う中小事業者等を支援する税制措置」など、あまりにも?な内容ばかりなのです。

そもそも、1年間の納税猶予を受けても、1年後にはすぐに納税できるのでしょうか。また、固定資産税・都市計画税を1年間だけ減額されて喜ぶ納税者はどれくらいいるのでしょうか。新型コロナウイルスの影響で売り上げが激減した中小企業は、設備投資など夢のような話で、どのように会社を守っていくかを考えると毎日寝られない経営者も大勢いると思います。

本当に利益が出ていなければ税金を払う必要もないとは言え、本当に助けてほしい人にはあまりにも無力な税制措置だと思います。

そして、会社の決算に携わる人たちには、あまりにも無情な内容だと言わざるを得ないのです。

 

田舎暮らしの経済事情を検証してみよう

田舎暮らしをしたいと思っている人にとって大きな不安となるのが、人付き合いやしきたりといったことのほかに、田舎での生活が経済的に成り立つのかという点です。

一般的に、田舎での生活はお金がかからないというイメージですが、実際のところはどうなのでしょうか。また、田舎の生活で収入を得たいと考えている人もいると思いますが、果たして可能なのでしょうか。

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こんな田園での生活も楽ではない?

田舎での生活にかかるお金を考えてみる

まずは田舎での生活費を考えてみましょう。都会での生活に比べて、すべての面において安くなるのか、あるいはどれくらいメリットがあるのか考えてみることとします。

田舎の生活拠点はどうする~持ち家か賃貸か~

都会に住んでいる人が田舎に移住する場合には、田舎の生活拠点をどのような形にするか考えなければなりません。田舎で住宅を借りるのと、田舎に住宅を購入するのとでは違いがあるからです。

当然のことですが、賃貸物件を探して住む方が初期費用も安く、手軽に移住することができます。ただ、「空き家バンク」などで田舎の物件情報を検索してみると、売却希望の物件が多いのに対して、賃貸物件の数が少ないことが分かると思います。

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賃貸物件は建物の管理や家賃の集金などを行う大家さんがいなければなりません。しかし、過疎化により賃貸物件を保有し管理する大家さんが減るのにつれて賃貸物件も減っており、一方で管理しきれない物件を売却しようとする人が増えているのです。田舎に住むのであれば、まずは賃貸がいいと思っていても、都会で賃貸物件を探すように、多くの物件の中から条件にあった物件を探すことができないかもしれません。
都会で賃貸物件を探すよりは、1か月あたりの家賃はかなり安くなると思います。ただ、築年数の浅い建物など条件のいい物件については、家賃もそれなりの金額になっています。

一方、購入を希望する場合、田舎の物件であれば賃貸より選択肢が増えます。そして、都会では考えられないような金額で、広大な敷地や畑のついた住宅を購入することが可能です。

ただ、田舎の物件が安いのは、それだけの理由があります。空き家バンクなどで売りに出ている多くの物件は、誰も相続したくない物件であったり、相続しても使い道のない物件です。相続したくない、あるいは安くてもいいから手放したいということですから、住むのに不便な場所にあったり、仕事を探すのに苦労するような場所にあったりします。仮に敷地が100坪以上もある住居が500万円で買えるとしたら、大変魅力を感じるかもしれませんが、はたしてそれだけの金額を出して購入する価値があるのか、よく考える必要があります。

特に田舎の土地・建物は相続の際に揉める原因となりやすいので注意が必要です。というのも、田舎に住んでいる親の所有する不動産を田舎に住んでいない子供が相続する場合、相続したくないと考える人が大半だからです。そのため、相続しても登記などの手続きを行わずに放置している人や、相続放棄して相続しないようにする人もいます。田舎に住居を購入した場合、自分の死後に発生する相続で子供が困るかもしれないと覚えておく必要があります。

賃貸にしても購入にしても、ある程度の妥協は必要ですが、何も比較せずに、そして現地に身に行くこともなく決めてしまうことのないようにしなければなりません。「空き家バンク」のようなサイトに登録されていない物件があるかもしれませんから、ある程度移住先の候補を決めたら、その地域の不動産事情を探るためにも、直接現地に足を運ぶ方がいいでしょう。直接現地に行くことで、掘り出し物の物件に出会えるかもしれません。

田舎と都会で生活費に違いはあるのか

田舎の方が物価が安い、とはっきり言えるのは家賃や土地の価格など、不動産にかかる金額だけです。それ以外の食料品や日用品などの支出は、田舎だから安くすむというわけではありません。

もっと言えば、田舎の方が物価が高くなるものもあります。それは、都会の方がお店の数が多く価格競争が起こりやすいのに対して、田舎はお店の数が少ないため価格競争が起こらなかったり、安いお店を探して買い物に行くことができないためです。

一方で、食料品は自分で野菜を育てたり、ご近所さんからのおすそ分けをもらえたりするため、安くつくことが多いと思います。ただ、新鮮な肉や魚が手に入りにくくなるなど、都会にはない不便さを感じる瞬間はあるかもしれません。

田舎の生活に車は欠かせない

田舎で生活するうえで大きな問題となるのが、公共交通機関が充実していないことです。そのため、病院に行くのも買い物に行くのも、すべて車を利用する必要があります。田舎の生活で車は欠かせないのです。

車が必要不可欠となるため、これまで都会での生活ではあまり車に乗っていなかった人でも、田舎に移住する際には車を購入することとなるかと思います。畑で野菜を育てたり、田んぼでお米を作ったりしたいのであれば、軽トラックや軽ワゴンを購入することとなるでしょう。維持費も安くすむうえ、農作業の荷物を載せたり肥料などを買い出しに行く際にはとても便利です。もし今、自家用車を保有しているのであれば、田舎への移住を機に買い換えるのがいいかもしれません。田舎では軽トラックや軽ワゴンが自家用車という人ばかりですから、かえって違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。

ただし、車の運転は危険も隣り合わせですから注意が必要です。特に、高齢ドライバーの事故が連日報道されている中で、同じような過ちを犯さないよう、自分の身に危険を感じたら運転をしないという選択をしなければならなくなります。車がなくても、買い物に行ったり病院に通ったりすることができるのか、あらかじめ考えておく必要があるのです。

田舎暮らしで収入を得たいが可能か?

田舎に移住して、年金とそれまでの貯金を取り崩して生活ができるのか不安に感じる人も多いと思います。そこで、何らかの方法で収入を得ることができないか考えることでしょう。田舎に移住したのだから、その環境を生かして商売を始めたいと考えるかもしれませんが、実際のところうまくいくのでしょうか。

田舎でカフェを開きたい

私個人の感覚では、テレビなどで紹介されている移住者のうち6割~7割くらいの人は、その移住先でカフェを開いているような気がします。もっとも、カフェを開いた移住者が多くマスコミに取り上げられているという面はあるでしょうから、実際はもっとその割合は低いのでしょうが。

移住したらカフェを開いて生活費だけでもいいから収入を得たい、と考えるかもしれませんが、現実はそれほど甘くありません。
田舎のお店ですから、観光地でもない限り、そしてよほど評判のお店にならない限り、やってくるお客さんの数は限られます。仮に地元に住む人だけをターゲットにするのであれば、1日の来店者は1桁、売上は数千円ということも考えられます。これでは生活費を稼ぐどころか、持出しとなる可能性大です。

それではどうしたら売り上げを増やすことができるのだろうと考えるかもしれませんが、やはり住む人が少ない田舎ではビジネスチャンスは限られます。カフェを始めるために移住するわけではないでしょうから、カフェをやって収入の足しにしようなどと考えない方がいいと思います。空いた時間を利用して、趣味の延長としてカフェを始めて、地元の人も含めた交流の場を作るというくらいの感覚でなければ、カフェの経営はしない方がいいと思います。

農業で収入を得たい

田舎に移住した際に、畑付きの家を購入したり、近所の人から畑を借りた利する人が多いと思います。最初は、自分たちで食べるための野菜を作るところから始めるのですが、次第に野菜作りにも慣れてくると、もっと大量に作って売ることはできないだろうかと考えるかもしれません。

野菜を作って売る方法として思いつくのが、道の駅などに設けられた農産物の直売所で売る方法です。その直売所を管理・運営している自治体やその外郭団体、農協などで生産者としての登録をすれば、誰でも作った野菜を売ることができます。

ただ、「売ることができる」からと言って簡単に作った野菜が売れるわけではありません。直売所には、もともと地元の卸売り市場に出荷している人、つまり「農業のプロ」が少量のロットで売りに出しているケースもあります。季節ごとにできる野菜は大体決まっていますから、数多くのライバルに対抗して売れる野菜を作るためには、相当の努力が必要です。

また、野菜が売れるようになったとしても、その収入が大きく増えるとは限りません。野菜を作るためには、野菜の種や苗、多くの肥料や除草剤などを購入しなければなりませんし、軽トラックや軽ワゴンだけでなく、トラクターや耕運機なども購入する必要があるかもしれません。これらの支出をしていると、野菜を売って得た収入はあっという間に飛んで行ってしまいます。収入を増やすためには、初期投資が必要というジレンマに悩まされるのです。こう考えると、農業で収入を得るというのは非常に大変なことなのです。

田舎に移住する意味をもう一度考えてみよう

田舎への移住を考えているあなたは、何をきっかけに田舎に移住したいと考えたのでしょうか。自然に囲まれた環境で、残された時間を心豊かに暮らして生きたいという人もいれば、ゆったりとした時間の流れる環境で自分らしく生活をしたいと考える人もいるでしょう。

田舎に移住して経済的なメリットを得ることは、なかなか難しいと言わざるを得ません。特に移住してから収入を得たいと考える人の場合、ここに書いたカフェや農業の経営が難しいだけでなく、アルバイトをしてお小遣いを稼ごうと思ってもそのアルバイト先がなかなかないということも考えられます。

そもそも田舎に移住して、収入を得る必要があるのでしょうか。もしどうしても収入を得なければならない事情があるのであれば、移住せずに都会で仕事を探す方が先決です。

ただ、田舎に移住すれば家賃以外の生活費も安くすむというわけではありません。田舎への移住を失敗しないためには、年金などの収入がどれくらいあり、毎月どれくらいの生活費がかかるのか、調べてみる必要があります。

田舎暮らしはホントに大変!

都会でのサラリーマン生活も定年を迎え、あるいはサラリーマン生活に見切りをつけて田舎です悠々自適な生活を送りたいと考えている方もいることでしょう。

しかし、田舎暮らしはハッキリいって楽ではありません。都会から田舎へ引っ越してきた人が直面する問題について、田舎に住む筆者が思いつく限り書いていきます。

 

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こんな田舎での生活にあこがれるかもしれませんが・・・

よそ者に対して非常に冷たい

人口減少や若者不足に悩む田舎ではありますが、来てほしいのはその田舎のしきたりを理解していて、どのような人かある程度分かっている○○さんの息子や孫であり、よそから突如引っ越してきた人があたたかく迎え入れられるわけではありません。

田舎には生まれてから一度も引っ越したことがなく、よそに住んだ経験もほとんどないという人がびっくりするほど多くいます。よそに住んだことのない人からすれば、田舎に引っ越してきて来る人は、これまでの平穏な生活を乱す邪魔者、といっても過言ではないのです。

ご近所付き合いが深すぎる

田舎は人付き合いが大変だというイメージはある程度持っているかもしれません。しかし、どれくらい大変なのか具体的には分からないと思います。

私が暮らす地域では、年に3回の神社のお祭りのほか、資源回収や神社の掃除を月ごとに担当となった班の人全員が行います。また、毎年田植え前に用水の掃除を農業関係者で行います。さらに、町全体で行う桜祭りの準備を有志(とはいっても半強制的にやらざるを得ない)が行います。さらに、消防団や農事組合といった集まりには、町や担当の班とは別にメンバーが集められます。

他にも、班ごとに集まって、年に何回か食事をしたり旅行に行ったりしています。このような集まりに顔を出さない人は、後で何を言われるか分かりません。人付き合いに煩わしさを感じる人には田舎の環境は耐えられないかもしれません。

年下は年長者に絶対服従

古くから、年長者をたてるという考え方は日本のどこにもあると思います。しかし、田舎に住む古い考えを持った人たちは、その考え方がかなり極端であり、また根強く残っています。

小さな頃からずっとその場所で生活してきた人が大勢いるため、誰が年長者で誰が年下か、常に意識して生活しています。そのため、誰と誰が同級生で、○○は△△の3つ年下、といった小学生のころからの記憶は、いつまでたっても消えないようです。突然、年齢も分からないような人がやってきてまともな意見を言ったとしても、まず相手にされることはないでしょう。

また、その場所による違いもあるかとは思いますが、私の近所では50代はバリバリの若手、60代でもまだまだ下っ端という感じでしょうか。

イベントごとは何がなんでも開催

1年に何回もある神社のお祭りですが、ちょっとやそっとでは中止になりません。一番身近なところでは、毎年3月に開催されるお祭りが今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため中止になるかと思っていましたが、予定どおり開催されました。

お祭りに集まるのは担当の班の人たちと、一部お祭りを楽しみにしている老人や子どもたちです。それほど多くの人が集まるわけではないため、神経質になる必要はないのかもしれませんが、その程度のお祭りだからこそ中止になると思っていたのが中止にならなかったのは、私にとっては衝撃的でした。

神主や住職の言うことは絶対

田舎の生活に大きな発言力を持つ人に、神主や住職がいます。このような人たちが大きな力を持っているため、先ほどの神社のお祭りも中止にならなかったということが言えるのです。

お祭りで町から支払われる御礼は、これらの人たちの貴重な収入源となっていることは容易に想像がつきます。一度縮小してしまうと、もう一度元に戻すのは大変ですから、できるだけ昔のまま続けたいのだと思います。そのため、これまで行われてきたお祭りなどの行事を中止にはしたくないのでしょう。おそらく、このような地域は他にもあるのではないでしょうか。

田舎で暮らし始めるのにいいタイミングは?

ここまで書いてきたようなことを理解したうえで、やはり田舎に住みたいという人には、経済的な面から田舎暮らしについて検討した別の記事をお届けしたいと思っています。

田舎暮らしは、悪いとは思いません。むしろ、自然に囲まれた日々を送ることこそ、人間本来の生活ともいえます。ただ、田舎に暮らし始めるのにいい年代はいつか、と聞かれたら、私は「子供が産まれる時」と答えます。それは、田舎の環境が子供にとっていいこと、そして子供をとおして自然に周囲の人と人間関係が築けるからです。年をとってから田舎で夫婦ゆっくり過ごすというのは、メディアによって作られた虚構のような世界の話だと思っています(もちろん、うまくいっている人もいるとは思いますが)。もしこの先、都会から離れて田舎での生活を始めたいと思っているのであれば、できるだけ若いうちに田舎に移住することをおすすめします。

不動産投資のメリットを考えてみる

資産運用の手段の1つとして、アパートやマンションなどの投資物件を購入している方もいるかと思います。一方、不動産投資に興味があってもなかなか一歩が踏み出せないという方もいることでしょう。
不動産投資を行うとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、資産運用として行う不動産投資のメリットを確認していきます。

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不動産投資の一例であるアパート

不動産投資のメリット⑴メインの収入とは別に収入を確保できる

不動産投資に限らず、資産運用を行ううえでの一番のメリットです。例えばサラリーマンであれば、勤務先からもらう給料がメインの収入となり、不動産投資で得る収入が副収入ということになります。

資産運用といえば、株式や投資信託の購入を検討している人も多いかもしれませんが、株式や投資信託保有していても、毎月の収入を増やすことはほとんどできません。これらを購入する目的は、値上がり益を得ることと配当収入を得ることにあるためです。一方、不動産投資の目的は賃料収入を得ることにあります。そのため、毎月の収入を増やすことができるのです。

本業の収入と不動産投資の収入を管理する口座を分けることで、副業収入により得た金額をより実感することができると同時に、不動産関係の支払はすべて不動産の収入から行い、確定申告の際に作業しやすくなります。

不動産投資のメリット⑵所得税・住民税の節税になる

不動産投資を行うと、建物を購入して保有している状態となります。建物を保有している場合、その購入金額を購入した時に一度に必要経費とするわけではなく、法定耐用年数にわたって減価償却を行い必要経費とします。また、購入当初は借入金の返済時に発生する支払利子の金額も大きくなるほか、固定資産税や管理費などの必要経費も合わせると、多くの場合、不動産所得の金額は赤字になります。

不動産所得の金額が赤字になれば、本業の給与所得や事業所得などと相殺することができるため、所得税や住民税の税額を減らすことができます。特にサラリーマンの方の場合は、年末調整でいったん税額計算を行っているため、不動産所得について確定申告を行うと、所得税の還付を受けることができます。

不動産投資のメリット⑶相続対策に使える

更地にアパートを建てた場合、その土地の相続税評価額は更地としての評価額より低くなります。どれくらい低くなるかは、その土地のある場所によって変わるため一概には言えませんが、2割以上低くなることも珍しくありません。

また、金融機関で借り入れをしたうえでマンションなどの投資用不動産を購入した場合、マンションが相続財産となります。マンションなどの不動産の相続税評価額は、一般的に時価の8割程度の金額となるため、現金のまま相続するより相続税の計算上有利になるのです。

また、借入れをした際には、団信(団体信用生命保険)に加入することが義務付けられることが多いと思います。団信に加入する分、保険料に相当する金額を支払利子として負担しなければなりませんが、亡くなって相続が発生した際に借入金を相続する必要はなくなります。そのため、相続した人は家賃収入を受け取る一方で借入金の返済をする必要はないため、相続人が生活費を得ることのできる財産として非常に有効なものとなります。

不動産投資のメリット⑷土地価格の上昇やインフレに強い

土地の価格はその時の経済情勢によって、上がったり下がったりします。また、土地の価格に限らず、物価全体が上昇していくインフレの状態になることもあります。インフレが起こった場合、現金だけを持っている人は物価上昇に対応することができませんが、現物資産である土地などの不動産を保有している場合は、その現物資産も物価の上昇にあわせて価格が上がるほか、家賃を上昇することもできるため、インフレにもあわてず対応することができます。

土地の価格が上昇したために、土地を売却して売却益を得れば、当初の想定以上の現金収入を得ることができます。ただし、土地の価格の上昇を狙って不動産投資を行うのはおすすめできません。あくまでインフレなどのリスクにも対応できるものとしてとらえておき、基本的には家賃収入で現金収入を得るものと考えるようにしましょう。

不動産投資には多くのメリットがあるが重要なのは収入を得ること

ここまで見てきたように、不動産投資には多くのメリットがあります。しかし、これらの点をメリットとするために必要なものがあります。それは安定した賃貸収入を得ることです。たとえ所得税や住民税の節税になるといっても、毎月の賃貸収入がなければ借入金の返済は本業収入からの持ち出しとなってしまいますし、相続対策になるといっても賃貸収入がなければ生きているうちに破産する結果となりかねません。

どのような物件が安定した賃貸収入を得られるのか、自分で調べるのはかなり大変なことです。はじめは専門の業者に依頼して、どのような物件が人気なのか、どのエリアの物件に人気があるのかをリサーチしてから購入するようにしましょう。 

中小企業の経営者や自営業者はiDeCoより小規模企業共済に加入しよう

iDeCoという名前は、節税の手段としても、老後の生活資金を確保するための手段としても、すっかり定着した感じがあります。また、実際にiDeCoに加入したという方も多いのではないでしょうか。

iDeCoを始めると、その掛金の全額が年末調整や確定申告の際に「小規模企業共済等掛金控除」の対象になるため、現役のうちから所得税の節税をすることができます。

ところで、iDeCoを開始して初めて年末調査の書類や確定申告書の作成をする時に、「小規模企業共済等掛金ってどういったものなのだろうか」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。ここでは、小規模企業共済とはどのようなものか、加入者の条件とそのメリットについて解説します。

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小規模企業共済等掛金控除の記載欄

 

小規模企業共済とは

小規模企業共済の制度は昭和40年(1965年)に始まりました。その目的はまず、小規模企業の経営者や個人事業主が現役を退いた後の生活を安定させることや、廃業した後に事業の再建を図ることができるようにすること。そして、サラリーマンや公務員と比べて、小規模企業の経営者や個人事業主社会保障が手薄であるため、その補完をすることです。
サラリーマンなどは加入の資格がないため、注意しなければなりません。

小規模企業共済の加入資格

次のような人が小規模企業共済に加入できます。

  1. 建設業、製造業などを営む場合は、従業員数20人以下の個人事業主または会社の役員
  2. 卸売業・小売業、宿泊業などを除くサービス業を営む場合は、従業員数5人以下の個人事業主または会社の役員

そのほか、組合や士業法人などの役員について、その従業員数に応じた加入資格が定められています。

小規模企業共済の掛金

小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から7万円までの範囲内で500円単位で自由に設定できます。

掛金の納付方法は、月払いのほか、半年払い、年払いから選択できますが、生命保険料のように年払いにしたからといって、その掛金が割り引かれるわけではありません。

共済金の受取りと金額

共済金を受け取ることができる場合にはいくつかの種類があります。

個人事業主の場合
  • 共済金A・・・個人事業を廃業した場合、亡くなった場合
  • 共済金B・・・65歳以上で180か月以上払い込んだ場合の老齢給付
  • 準共済金・・・法人成りして加入資格を喪失した場合
  • 解約・・・任意解約、12か月以上の滞納
法人の役員の場合
  • 共済金A・・・法人が解散した場合
  • 共済金B・・・病気やけがで役員を退任した場合、65歳以上で役員を退任した場合、亡くなった場合、65歳以上で180か月以上払い込んだ場合の老齢給付
  • 準共済金・・・法人の解散や病気・けが以外の理由で役員を退任した場合、65歳未満で役員を退任した場合
  • 解約・・・任意解約、12か月以上の滞納
共済金の額

共済金の額は、掛金の額と掛金の納付月数により決まっています。また、共済金を受け取る際の理由によって、共済金A・共済金B・準共済金・解約手当金のいずれかの金額が支払われます。

例えば、掛金月額1万円で20年加入した場合(掛金の払込総額240万円)の共済金は以下のとおりです。

  • 共済金A 2,786,400円
  • 共済金B 2,658,800円
  • 準共済金 2,419,500円

共済金を受け取る際の理由によって、共済金の額には大きな差があります。ただ、準共済金を受け取るのであれば、加入期間が短くても掛金の総額を下回ることはありません。

ただ、解約手当金を受け取る場合には、掛金の納付月数が240月、つまり20年を超えていないと、掛金の総額を下回ってしまいます。

小規模企業共済をおすすめする理由

小規模企業共済が経営者や自営業者におすすめな理由はいくつかあります。

  1. 加入の手続きが簡単で、好きな時に始められる
  2. 共済金の金額が定められているため、運用状況をチェックする必要がない
  3. 途中で解約してもメリットが得られる

これらの点について、その内容を確認しておきます。

1.加入の手続きが簡単で、好きな時に始められる

小規模企業共済の加入手続きは、独立法人中小企業基盤整備機構が提携している金融機関で行うことができます。確定申告書の控などの必要書類を準備したうえで、契約申込書に記入すれば申し込みは完了します。

また小規模企業共済に加入を決めた時に、年払いで最高84万円の掛金を払い込むことができるため、最初から多額の所得控除を受けることができます。多額の所得税が発生しそうな時には、年末に加入手続きを行い掛金の払込をすることで、大きな節税効果を受けることができるのです。

2.共済金の金額が定められているため、運用状況をチェックする必要がない

小規模企業共済は、あらかじめ共済金の額が定められており、自分で運用することによってその共済金を増やすことはできません。

ただ、会社の経営や事業に集中したい経営者にとっては、運用状況を常時チェックする時間はないかもしれません。そのため、運用によって増やすよりも、確実に受け取ることのできる金額が決まっている方がいいのではないでしょうか。事業をたたんだ時や役員を退任した時に、退職金代わりに受け取ることができるので、退職後のライフプランも立てやすくなるはずです。

3.途中で解約してもメリットが得られる

途中で解約した場合は、掛金の納付月数が240月を超えないと、払い込んだ金額以下の解約手当金しか受け取ることができません。そのため、解約しなければならない状況になってしまうことがデメリットと考えるでしょう。

しかし、解約手当金の額によっては必ずしもメリットがないわけではありません。なぜなら、払い込んだ掛金については所得控除の適用を受けているため、解約するまでの期間にわたって節税の恩恵を受けているからです。

節税となる金額は人によって異なりますが、所得金額が大きい人ほどその額は大きくなります。例えば、課税所得金額が1,000万円の人が月額7万円・年額84万円で小規模企業共済に加入していた場合、払い込んだ掛金による節税額は所得税と住民税を合わせて367,000円にもなります。加入してから10年間で解約した場合は、トータルで367万円もの節税を受けていることとなるため、解約手当金が元本割れとなったとしても、全体で見ればプラスになっている場合があるのです。

 共済金や解約手当金の受取には最低加入期間がある

共済金A及び共済金Bを受け取る場合、掛金納付月数が6か月以上必要です。また、準共済金及び解約手当金を受け取るためには、12か月以上の掛金納付月数が必要です。この最低納付月数をクリアできない場合には、戻ってくる金額が全くないこととなってしまうため、あらかじめ覚えておいてください。

iDeCoってそんなにメリットがあるの?

iDeCoという名前を聞いたことがある人は多いと思います。もしかしたら、すでに加入しているかもしれません。ただ、iDeCoに加入していても加入していなくても、その中身はよく分からないと感じている人も多いのではないでしょうか。
iDeCoには多くのメリットがあるため、加入することに損はないかのように言われますが、本当にiDeCoにデメリットはないのでしょうか。ここでは、iDeCoのメリットと加入時の注意点について考えてみます。

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iDeCoの加入者は年々増加している

iDeCoとは、掛金を拠出したうえで自分で運用方法を選択して運用し、60歳以降にその掛金と運用益を合わせた給付金を受け取るというものです。公的年金だけでは老後の資金が不足してしまうため、自分でその資金を準備しておこうと考える場合の選択肢の1つとして利用されています。

iDeCoが広く利用されるようになったきっかけは、2017年1月に公務員や主婦、企業年金のある会社員も加入することができるようになったことです。これを1つのきっかけに、加入者数は大きく増加しています。

2016年12月 306,314人(190,354事業所)

2017年3月 430,929人(220,422事業所)

2018年3月 853,723人(323,579事業所)

2019年3月 1,210,037人(404,074事業所)

2020年1月 1,492,728人(467,740事業所)

運営管理機関連絡協議会作成の統計資料より

こうしてみると、加入者の要件が緩和された2017年以降に、加入者が増えていることが分かります。特に2017年3月と2018年3月を比較すると、加入者でほぼ倍増し、登録事業所の数も1.5倍程度に増加しています。

このことから、同じ事業所の中でiDeCoの加入者が増加しているといえます。実際、加入者を登録事業所の数で計算した1事業所あたりの加入者数を見ると、2016年12月1.61人だったのが2017年3月1.96人、2018年3月には2.64人と大きく増えています。その後も増えて、直近の2020年1月では、3.19人にまで増えています。

ネットでも雑誌でも、iDeCoの情報はかなり豊富にあるため、そのような情報をもとに加入者が増えているように感じるかもしれません。しかし、実際にはそのような情報よりも口コミの方が加入者の増加に貢献しているかもしれません。また、iDeCoに加入する際は勤務先での手続きが必要となるため、その手続きに慣れた事業所が増えていることも、加入者が増える一因となっているようです。

iDeCoには3つのメリットがある

iDeCoに加入した場合のメリットは、大きく3つあるといわれます。

  1. 拠出した掛金は全額が所得控除の対象になる
  2. 運用期間中に生じた運用益には税金がかからない
  3. 受取時に公的年金等控除あるいは退職所得控除の適用を受けられる

1の拠出した掛金が全額所得控除の対象になるというのは、働いている間に受けられるメリットです。iDeCoに加入すると、その人が会社員が自営業者か専業主婦かによって決められた上限額以内であれば、拠出する金額を自分で設定することができます。そして、その拠出した金額は、年末調整や確定申告を行う際に、全額が所得控除の対象となります。
サラリーマンの場合、多くの人は所得税と住民税あわせて15%あるいは20%で課税されているため、年間掛金の15%か20%の税額が節税できることとなります。

2の運用益が非課税となることも、掛金を拠出し運用している間に受けられるメリットです。株式や投資信託を購入して売却益が発生したり、配当金や分配金を受け取った場合、その利益に対して約20%の税金がかかります。しかし、iDeCoで運用した場合に発生した利益については非課税とされているのです。

3のメリットは受取時に受けられるメリットです。iDeCoで運用したお金は、60歳以降に一時金または年金で受け取ることとなります。いずれの受取方法にするかは自分で選択することができます。この時、一時金として受け取るのであれば退職所得控除額が適用されます。また、一時金として受け取るのであれば公的年金等控除が適用されます。その結果、受け取る金額の全額が所得税の対象にならないようにされているのです。

3つのメリットについて考えてみると違和感を感じるものも

この3つのメリットがあることから、iDeCoに加入する方が圧倒的に有利であるように思われます。しかし、このメリットの中には、よくよく考えてみるとおかしなものもあります。

それは3つ目のメリットにある「受取時に公的年金等控除あるいは退職所得控除の適用を受けられる」ことです。受取時に全額が税金計算の対象にならないことは、受け取る人にとっては大きなメリットだと考える人は、もう一度そのお金の出どころについて考えてみてください。そもそも、iDeCoに加入している人が受け取る給付金には、自分が過去に拠出したお金が含まれているのです。

つまり、現役中には使わないように別の財布に分けて入れておいた自分のお金を、老後に使おうと思って手元に持って来ただけなのに、税金がかかってしまうのです。これは、メリットどころか大きなデメリットといってもいいかもしれません。

ちなみに、iDeCoを利用しないで購入した有価証券や投資信託は、売却した金額から購入した金額を差し引いた後の利益に対して課税されますが、購入した時の金額分については、あくまで自分のお金が戻ってきただけなので、課税の対象にはなりません。このような考え方は、有価証券などの金融商品を購入した時だけでなく、土地などの不動産を購入した場合や、卸売業・小売業などの事業者に対して課される所得税法人税の計算においても用いられる、会計上・税務上の基本的な考え方です。

なぜiDeCoの税制を整備する際に、自分で拠出した金額に相当する金額については原価に相当するため課税対象としないこととしなかったのか、大いに疑問が残るところです。しかし、今となってはこの税制に変更がなされるとも考えられません。この点について理解したうえで、それ以外のメリットをふまえて、上手にiDeCoを利用する方法を考えていくといいのかもしれません。

学資保険はオワコンなのか?

学資保険といえば、今でも子供の教育資金を確保するために最もポピュラーな手段の1つです。
しかし、ファイナンシャルプランナーや資産運用に長けている人の中には、その運用効率の悪さを理由に、学資保険不要論がかなり勢いを増しているように思われます。

果たして本当に学資保険は『オワコン』なのでしょうか。

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教育にお金はかかるものですが・・・(イメージ)

学資保険が不要といわれる理由

学資保険が不要といわれるのにはそれなりの理由があります。

1番の理由は、学資保険を利用した場合の返戻率がかなり低いことです。学資保険の内容は保険会社によってさまざまなので単純に比較するのは難しいのですが、他の保障をつけずに学資だけの保険として利用した場合、返戻率は105%前後となっています。学資を実際に受け取るのは17歳~22歳の間となっているわけですから、保険に加入してから受け取るまでの20年近く保険会社に運用をお願いしても、わずか5%程度しか増えないのです。自分で資産運用をしている人にしてみれば、これはかなり低い数値といえるでしょう。

ちなみに、学資保険の条件は以前よりかなり厳しくなっています。私が子供の学資保険の契約をした十数年前の場合、他の保障はなし、途中の祝い金の受け取りもなし、17歳に一括で受け取る条件として返戻率は110%を超えていました。しかし、現在同じような条件で学資保険の契約をすると、返戻率はかなり低くなっています。他の保険会社でも、受取時期を大学入学前の17歳・18歳に全額受け取るのではなく、大学在学中に毎年受け取るようにするなど、できるだけその時期を後ろにずらして、運用期間を少しでも確保しようとしていることが分かります。

2つ目は、何らかの事情により中途解約をすると元本割れすることです。これはどの保険でも起こりうることなのですが、学資保険についても例外ではありません。

3つ目にあげられるのは、保険会社が破たんした場合には当初の契約通りの学資を受け取ることができなくなることです。実際、過去には生命保険会社の経営破たんが何社も起こった時期がありました。この先も、そのような事態が発生する可能性は否定できませんから、保険に加入すること自体にもリスクはありますし、保険会社選びは重要なのです。

これらの理由により、生命保険会社の学資保険を利用するより、自分で資産運用しながら教育資金を確保する方がメリットがあると考えられているのです。

学資保険は「保険」である

確かに、支払った保険料に対して戻ってくる学資の増加がわずかしかなければ、学資保険本来の目的である教育資金の確保についての満足度は低くなってしまいます。ただ、現在の世界規模での金融市場の動向を考えると、保険会社が保険加入者に一律に支払う学資の金額としてはこれが限界なのかもしれません。

学資保険が貯蓄ではなく「保険」であるのには理由があります。それは、保険契約者が万が一亡くなった場合には、その後の保険料を支払わなくても学資を満額受け取ることができることです。実際にはそのようなことが起きない方がいいのですが、最悪の事態に備えるために利用するという点で、貯蓄や資産運用とは異なる存在価値があるのです。

自分で教育資金を確保できる人は必要ない

実際に学資保険を利用するといいのは、教育資金を普通の預貯金から切り離して確保することが難しい人や、毎月少しずつ貯蓄することが苦手な人です。

教育資金は、子供の成長とともに必要になりますが、そのための貯蓄がある日突然増えるわけではありません。特に大学入学前には、大学の入学金や学費だけでなく一人暮らしを始めるために必要なお金も多額になります。このようなお金を計画的に準備することができない人は、子供が小さなうちから少しずつ、普段使えないような場所に強制的に分けておく必要があるのです。

逆に、コツコツ貯めなくても教育資金をすでに確保できている人や、強制的な手段に頼らなくても教育資金を確保できる自信のある人は、運用効率の悪い学資保険を利用する必要はありません。

学資保険不要論を主張している人の多くは、学資保険がなくても教育資金を確保できる人、あるいは学資保険がなくても教育資金を貯めることのできる人なのです。

お金に色はついていない

よく「お金に色はついていない」と言われます。教育資金や住宅の頭金など、まとまった出費に備えてお金を分けておいても、いざとなればそのお金は自由に使えてしまいます。そのため、自分で自由に使えるお金を何かの目的を達成するまで使わずにおいておくのは難しいのです。

そのため、自分で自由に使えない状態にしておくことが有効となります。学資保険に加入すると、解約した場合に元本割れするデメリットがあると書きましたが、これこそが学資保険を利用する1つの理由なのです。

返戻率だけにとらわれず、本当に20年近くの期間にわたって、それだけの貯蓄を続けられるのかを考えてみましょう。そして、自分の意志が弱いと感じるのであれば、学資保険を利用することも検討してみましょう。